こんにちは。エラマプロジェクト代表、フィンランド生涯教育研究家の石原侑美です。
2024年もあと少しとなりましたが、みなさんにとって今年1年はどのような年だったでしょうか。
わたしは今年も現地での研究、スタディツアー開催のため夏から秋にかけて2ヶ月間フィンランドに滞在しました。昨年と違い、今回は家族と一緒ではなく1人でその期間を過ごしました。
その間に、フィンランドの良さを感じつつも日本の良さ、すばらしさをあらためて実感することになりましたのでそれについて今回はお話したいと思います。
物価の高さはやはりつらい
日本も以前から物価がどんどん上がっている状況ですが、フィンランドも物価がかなり高いので滞在中の生活はやはり楽ではありません。
例えばランチ。フィンランドのランチはビュッフェランチが基本なので、安いところでも18ユーロ、3,000円(2024年11月12日現在のレート)くらいかかります。だから気軽に外に食べに行けないんです。
ファストフードやカフェに行けばもちろんもう少し安く済みますが、それでもそれなりの価格です。そのためやはり気軽には外食できません。
だからスーパーで食材を買って自分で調理して食事を摂ることがほとんどでした。イタリアのリゾット用のお米(ジャポニカ米)がフィンランドのスーパーで手に入ったのですが、それを鍋で炊くと日本のお米と同じように食べられたので、基本食はご飯を炊き、持参していたお味噌で味噌汁を作っていました。
他にはそのお米を使ってリゾットを作るなどして料理はそれなりに楽しんでやっていました。
ただ、日本ではわたしの場合、義母が食事の支度をしてくれることもあるので自分が作った料理をずっと食べ続けるということはあまりありません。なので、ちょっとしたお惣菜を買いたくなる日もあったんです。でも、お惣菜であっても「がんばって自分で料理するか」……という気になるくらいの値段なんです。
そんな物価の高さなので、フィンランドでは日本の生活でイメージするほどお腹いっぱい食べるということができませんでした。
講座などでお話したこともあるんですが、フィンランド人は1日5食食べるんです。日本のように定食並みのしっかりとしたご飯というよりは、ちょこちょこ食べる感じです。むしろそうしたほうがフィンランドの場合は経済的にもお腹的にもちょうどいいというわけなんです。
10月下旬に帰国しましたが、帰国後は食事の面で日本のありがたさをすごく感じました。食事が美味しいこと、自宅で収穫できる新鮮な野菜はもちろん、スーパーで買う場合でも国産の野菜がたくさんあることがとても幸せです。帰ってきて漬物をボリボリ食べたときどれほど幸せを感じたか(笑)。
JALと羽田空港にも感謝
帰国便はJALを利用したのですが、実はJALの機内食で泣いたんです。味噌汁の美味しさに(笑)。
あとは、JAL専用の亀田製菓おつまみミックスと日本茶でもかなり気分が上がってしまいました!
そして日本に到着したらまた別の驚きと発見がありました。羽田空港の国際線ターミナルにある「江戸小路」をご存じですか。
第3ターミナルの4階には江戸の町並みが再現されています。
外国人観光客向けのいかにもなおもてなしの風景を見ると、住み慣れている日本人からすると冷めた目で見てしまうこともあるかもしれません。しかしフィンランドで仕事をたくさんして2ヶ月ぶりに帰ってきたわたしは、「江戸小路」を見てすごく落ち着いた気持ちになり、安心感に包まれたのです。
奇をてらってやっていることにではなく、ここまで世界観を作って歓迎してくれているという心に感動しました。
到着後わざわざ4階まで行きましたし、そこでほっとして一息つきました。
見方が変わると違った角度で景色や良さに気づけるひとつの例かなと思います。
エネルギッシュさの違いは日照時間の差なのか?
日差しがあるというのも幸せポイントの大きな要素ですね。フィンランド滞在は8月〜10月にかけてだったので、9月〜10月になると日照時間が少なくなり曇りの日が多くなるんです。以前にもお話したことがあるんですが、太陽の光のあるなしは心身にどうしても影響が出ます。
フィンランドの人たちはそういった環境に工夫を凝らし日々生活しています。そしてフィンランドの良さと言えば、静寂だと思います。日本では味わえないくらい耳にとっての静かさもありますし、デザイン的にも広告が少ないため、目にもうるさくないというか、静寂を享受しやすい環境であるのがすごくいいんです。
一方で日本に帰ってきていいなと思ったのは、フィンランドとは逆のエネルギッシュさでした。心地いいなと思ってしまいました。日本の人と話しているとエネルギッシュだなと感じたんです。
フィンランドの人は落ち着きすぎているので「エネルギッシュ」とは言い難いんですね。なので、日本の人と話していると元気がもらえます。帰国してからの3週間くらいの間にその明るさも大きな魅力に思えました。
フィンランドと比べて太陽の出ている時間が長いからなのか、四季を感じてみんなが変化を楽しんでいるからなのか、日本(人)のエネルギッシュさに今さらながらに気づきました。
アジアの中ではまだ落ち着いているほうかもしれませんが、それでも日本に住んでいる人からはかなりの熱量を感じ取りましたよ。
感じ取ったことを形にしていきたい
ここまでわたしが日本や日本的なものを良い!と感じたのは、パートナーと離れて1人でフィンランドで過ごしたというのも大きいのかなと思っています。滞在期間中、お互い時間が合わずオンラインですら顔を合わせてコミュニケーションがとれない日が続いたこともありました。
ツアーを実施したことでそれなりに日本語を話したので、言語の面でストレスが溜まったことはありませんでした。ただ、家族と離れている期間が2ヶ月あったのはかなり久々だったので、孤独感に襲われる瞬間は多かったです。
大人になると時間の流れが速く感じるでしょう?でも今回、嫌なことがあったわけでもないのに2ヶ月間がとても長く感じたんです。
もちろんフィンランドの心地よさも感じてはいました。先述した静寂さのほかにも、わたしにとってフィンランドの人との距離感は心地いいものでした。離れて見守ってくれているあの感じがすごく好きなんです。自然もいちいち全部美しいし、人にも恵まれているのですごくいい環境なんです。
それでも家族ロスがひどく、本当にホームシックか!っていうぐらい、日本シックではなくて石原家シックみたいな感じで早く帰りたいって思うこともたびたび……。
そういう体験をしたので、帰国後、小さな幸せを一つ一つ噛みしめています。幸せに対する感度がとても高まっている感じがします。
いつも住んでいる場所から外へ、日本から海外へ出るからこそわかることがあるんですよね。わたしが住んでいる高山市でもずっと地元にいる人よりもUターンした人や移住者のほうが高山の良さを語れるとよく言われています。今回のわたしの体験もそういったことと近いのかなと思いました。しみじみと日本の良さを感じることになりました。
今後は、これまでエラマでやってきたことを含め、日本に帰ってきたときに感じたエネルギッシュさやものを大切にするときなどの精神性を海外の人にも発信することを考えています。そんな講座をたくさんご用意していますので、ぜひエラマプロジェクトのHP「エラマの学校」ページをチェックしてみてください。
また、エラマプロジェクトの情報はWebサイトやSNSでお知らせしていますので、こちらもぜひチェックしてみてくださいね!
By 石原侑美(エラマプロジェクト代表)Interview & Text by nakagawa momo(フリーライター)
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2024年11月30日(土)、名古屋市の森の会議室にて、「北欧フィンランド・ウェルビーイング現地調査&ツアー報告会 〜サステイナブルな暮らし、学校教育、働き方〜」が開催されました。本イベントは満席となり、盛況のうちに幕を閉じました。
フィンランド生涯教育研究家の石原侑美が、2ヶ月に渡る現地調査・研究滞在、そしてツアー実施の成果を報告する貴重な機会となりました。参加者は、エラマの森会員の方からエラマプロジェクトやフィンランドに初めて触れる方、そしてツアー参加者までと幅広く、約17名が集まりました。
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会場は「森の会議室」という名にふさわしく、森の自然に囲まれたようなリラックスした雰囲気。コーヒー、フィンランドのお茶、お菓子を楽しみながら、参加者は石原氏の報告に熱心に耳を傾けていました。
報告会では、フィンランドの基礎知識から始まり、サステイナブルな社会づくりとウェルビーイングな暮らし、働き方とウェルビーイング(職業教育)といったテーマに深く切り込みました。小中一貫校やスマートシティ、ゼロウェイストレストラン、オーガニックハーブ農園といったサステイナブルな社会を支える現場、そして職業専門学校や森林ウェルビーイングプログラムといったフィンランドならではの働き方への取り組みが紹介され、参加者に多くの学びと刺激を与えました。
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また、石原氏が現地で買い付けてきた北欧雑貨の販売もあり、イベントをさらに彩りました。
報告会後には活発な質疑応答や参加者同士の交流が行われ、イベント終了後も1時間ほど会場に残って対話を続ける姿が見られました。フィンランドの文化に触れるだけでなく、「豊かさとは何か」「幸せな生き方とは何か」といった本質的な問いについて考え、共有する貴重な時間となりました。
名古屋での報告会は大盛況のうちに終了しましたが、フィンランド・ウェルビーイング現地調査&ツアー報告会は、岐阜県高山市(12月4日)、三重県伊賀市(12月7日)、オンライン(12月19日)でも開催予定です。ご興味のある方は、ぜひご参加ください。
12月のエラマの学校の開催予定
2024年11月10日、Gozar新宿御苑にて、フィンランド生涯教育研究家 石原侑美による「フィンランド調査研究滞在報告会」を開催いたしました。
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本報告会は、石原が2024年8月から10月にかけて行ったフィンランドでの2ヶ月間の調査研究滞在、そして現地ツアー実施の成果を皆さまと共有する貴重な機会となりました。物価上昇や大統領選、移民問題など、社会変化の渦中にあるフィンランドの“今”を、研究者視点と現地で活動する実践者視点の両面から紐解き、フィンランド社会の柔軟な対応力や人々のマインドセットに迫りました。
当日は、午前と午後の二部構成で開催。
【午前:北欧フィンランド・ウェルビーイング現地調査&ツアー報告会(10:30〜12:00)】
フィンランドのウェルビーイングな社会の取り組みと暮らしに焦点を当て、9月に実施された現地ツアーの報告を中心に行われました。小中一貫校やスマートシティ、ゼロウェイストレストラン、オーガニックハーブ農園といった訪問先での体験談に加え、一般家庭訪問や森散策の様子も紹介され、フィンランドのリアルな暮らしが鮮やかに伝えられました。
【午後:北欧フィンランドの教育とライフスタイルの講座〜なぜフィンランドは幸福度が世界一位なのか〜(13:30〜15:00)】
7年間のフィンランド教育研究の集大成ともいえる本講座では、石原さんの豊富な知見に基づいたフィンランド教育の真髄が語られました。2024年に視察した学校(小中一貫校、高等学校、職業専門学校)の様子や、フィンランドの職業教育とウェルビーイングの関係性、働き方やライフワークバランスのマネジメント方法など、多岐にわたる内容が展開されました。
【両部共通】
フィンランドの基礎知識:地理、歴史、国民性などを初心者にも分かりやすく解説。
ワーク:参加者同士が対話を通して学びを深め、気づきを共有するワークを実施。
質疑応答:石原への質問を通して理解を深める時間を設けました。
【会場の様子】
フィンランドのコーヒー、お茶、お菓子、そして飛騨高山や参加者の方々からの温かい差し入れが並ぶ和やかな雰囲気の中、石原がフィンランドで買い付けた北欧雑貨の販売コーナーも盛況でした。また、関連書籍の展示コーナーも設けられ、参加者の皆さまは思い思いにフィンランドの世界観に浸っていました。
イベント終了後も、参加者同士の活発な交流が2時間近く続き、フィンランドへの関心の高さと共に、エラマプロジェクトのコミュニティの温かさを感じさせるひとときとなりました。
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ご多忙の中ご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました! エラマプロジェクトは、今後も皆さまにフィンランドの魅力をお届けするイベントを開催してまいります。どうぞご期待ください。
【次回イベント予告】
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この秋、私たちは「北欧のシリコンバレー」と呼ばれるフィンランド・オウル市で、6泊7日の視察ツアーを実施しました。テーマは「働き方とウェルビーイング」。現地の様子をレポートします。
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ツアー概要
日程:2024年10月13日(日)〜10月19日(土)
場所:フィンランド・オウル
参加者:大学生、企業人事、教育関係者など8名
1. 職業専門学校 OSAO での発見
OSAOは、フィンランドの教育システムを象徴する場所でした。生徒の立ち入りが禁止されたスタッフルームは、先生たちが肩書きを外し、リラックスできる空間。コーヒーブレイクは法律で定められており、効率的な働き方を実現するための重要な要素となっています。また、進路変更が当たり前のフィンランド社会らしい「学び直し」の制度も印象的でした。教員の目標は就職率ではなく、生徒の「being(在り方)」を育むこと。生徒一人ひとりの個性を尊重する姿勢を学びました。
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2. フィンランドの幸福度の秘密
世界幸福度ランキングで常に上位にランクインするフィンランド。その秘密は、小さな幸せを大切にできる感性と、自分自身と向き合う時間をしっかりと確保している点にあると感じました。長い冬の中で培われた、自然との共生、そして「足るを知る」という価値観は、私たちにとっても大きなヒントとなるでしょう。
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3. 自然の中での学び:森林ワークショップ
国土の65%が森林というフィンランド。自然は、人々にとって心身をリフレッシュさせるための大切な資源です。森林ワークショップでは、DRAMMAモデルに基づいたプログラムを体験。五感を研ぎ澄まし、心と体の声に耳を傾ける時間を持つことができました。
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4. 自分を大切にする時間:「マイタイム」のススメ
モニカ・ルッコーネンさんのワークショップでは、「マイタイム」という概念を学びました。仕事や家庭の責任から離れ、自分のための時間を持つことは、決してわがままではなく、むしろ周囲にも良い影響を与えるという考え方。忙しい毎日の中で、自分自身をケアすることの大切さを改めて実感しました。
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参加者の声
「フィンランドの教育システムは、個性を尊重し、学び続けることを支援する素晴らしい仕組みだと感じました。」(教育関係者)
「自然の中で過ごすことで、心身がリフレッシュし、新しい発想が生まれることを体験できました。」(企業人事担当)
「マイタイムの考え方は、日々の生活に取り入れやすく、自分自身を大切にするためのヒントになりました。」(大学生)
今回の視察ツアーでは、フィンランドの働き方、ウェルビーイング、そして教育の最前線を体験することができました。自然との共生、個人の尊重、そして学び続ける姿勢。これらの要素が、フィンランド社会の幸福度を高めているのだと感じました。私たちは、この学びをエラマの学校の活動にも活かしていきたいと思います。
ツアー報告会、開催します!
本ツアー、並びに9月に実施したフィンランドのサステイナブルプログラムに関する報告会をリアル開催します!
◆同日開催!13:30〜北欧フィンランドの教育&ライフスタイル講座
こんにちは。エラマプロジェクト代表、フィンランド生涯教育研究家の石原侑美です。
現地での研究、フィンランドツアー開催のため今年もフィンランドにやってきました。
この記事が公開されるのは1本目のツアー「フィンランドのサステイナブルな社会とウェルビーイングの暮らしを学ぶプログラム」が終わった後。そしてその約1ヶ月後、10/13からは2本目のツアー「”北欧のシリコンバレー”フィンランド・オウルで働き方とウェルビーイングを学ぶプログラム」を開催します。
8月中旬からフィンランドに滞在し、1本目のツアーが始まる前の約2週間はサイマー湖水地方で過ごしていました。
その期間でわたしが得られたことなどみなさんにも共有できたらと思う経験がありましたので、今回は「余白」と「対話」と「勇気」に関するお話をしたいと思います。
最初の2週間は森と湖に囲まれて
8月、フィンランドのサイマー湖水地方、プンカハリュに到着。ここに来て感じたのは、まず去年より湿気が多かったことです。滞在2週目のある日に森の中を歩いていたら暑くて汗をかきそうなくらいでした。
気温自体は日本と比べるとかなり低くて21〜22度くらいだったんですが、それ以上に暑く感じて、日差しも強かったです。
その週は1日だけ台風かと思うくらいの風と雨と雷がすごい日がありましたが、それ以外の日はずっと晴れていてとても気持ちよく過ごせました。
隣のコテージにはフィンランド個人旅行のコーディネートを担当した一家もいらっしゃって、約1週間滞在されました。スケジュールを一部ご紹介すると、ある夜はコテージでバーベキュー→サウナに入る→湖で泳ぐを繰り返し、みんなできれいな景色や自然の中の楽しさを味わっていました。
そして、個人では行くのが難しい、現地の小学校見学にも行きました。翌日は
プンカハリュ在住の森林浴ネイチャートレーナーで「SaimaaLife」を運営しているマリ・アホネンの案内のもと森の散策に行き、その後はコテージでカレリアパイとブルーペリーパイを作るワークショップがありました。
このようにわたしは通訳やガイドの仕事で人と過ごす時間はあったのですが、基本的にはいつもの暮らしとは違う形(家族と離れて一人)で過ごす時間がとても多く、自己対話の時間も生まれていったのです。
きれいな景色に癒されると病む?
フィンランドでも通常の仕事はしているのですが、その仕事でいろいろあり、どうしようもなくなったときがありました。
そういう場合は日本にいたらおいしいご飯を食べるとかお酒を飲むとかちょっと外に食べに行こうとか、そういった発散の仕方ができますし、わたしは家族と一緒に暮らしているので家族と話してちょっと気分転換することもできるんですが、一人だとそれができないんですよね。
今はオンラインという方法もありますが、家族も忙しくて1週間話せないという状況にもなりました。コテージの前に湖がある場所に滞在していたんですが、落ち込んだ気分で外をパッと見ると、すごく景色がいいから、より病んでしまったんです。
もちろんきれいな景色を見ると癒されますが、同時に一人だとすごく病みやすくて。日差しはあるのに病みやすかったです、その1週間は(笑)。
例えばあの人はなんでそんなことを言うんだろうとか、わたしがもうちょっとこれを確認しておけばよかったのかと後悔したりとか、自分ではコントロールが効かないくらいの、心の中のどろどろした部分、闇の部分というのがあって。
その中でハッと景色を見ると湖がキラキラ光っているし、白樺の葉も湖のきらめきのようにキラキラしていて。
光を見れば見るほど、美しすぎる景色の前でより自分の闇が出てくるような、闇があるということにどんどん気づくような。
光に照らされるほど自分の影が濃くなるーー。そんな感覚に陥ったんです。
これが、もし暗い秋や冬だったらまた違う感覚なんでしょうが、明るくていいものに出会っていくほど自分の闇に気づいてしんどくなる感覚です(苦笑)。
日頃から自分を見つめるという習慣はありますが、やっぱり生きているといろいろ起こります。そのたびに問いを立てて向き合ってはいるのですが……。
しかし、それでもその1週間はいい自己対話ができた日々でもありました。
自己対話と余白
わたしの場合は、自己対話は心の中だけでやっています。人によっては書き出したり、誰かに聞いてもらったりする方法の方もいると思います。
仕事以外の時間は、心地いいL字型ソファーに寝そべって過ごすことが多かったです。窓からは湖などの景色が見える位置だったんですが、気持ちがほどけていくからこそ闇だけではない自分の本音が見えてくるというのはあると思うんです。
ある日、自分の声なのでしょうがふと「わたし本当にその生き方でいいの?」がやってきたんです。自然の中で余白が多くなると自分と対話しやすくなるとあらためて気づきました。
実は答えも出たんです。
前々から、自分が近い将来にやりたいと思うものがありました。それは周りも賛成してくれているし、このまま実現のための準備をしようと思っていて、自分自身もそんなに疑問を持たずに進んでいたんですね。
でも、本当にその道でいいの?と思ったときに、それを「やらない」という答えになりました。正確に言えば、90%以上その結論に至りました。短期間にそんな疑問がすぐに出てきて自分で決断できるのは初めてだったので、不思議な体験でした。
この1週間はわたしにとって本当にしんどかった一方で充実していました。
結果的にひさしぶりの一人時間を満喫した、という話になりますね(笑)。
「余白」とは、日本にいるときなら、仕事がある程度落ち着いたら、次は夜ご飯を作るとか、明日のための準備をするとか、畑から何か取ってくるとか、家でやることがたくさんあります。
でも、一人になるとまずスケジュール的な意味での余白ができます。
それによって、考えなくていいことが増えて、頭の余白もできますね。
日本にいると「今日何作ろうかな、何を作る必要があったかな?」と思うと、そのためには買い物に何時に出て、何を買うと何のメニューになるかな、明日銀行に行かなきゃいけないよね、などなど、仕事以外にも考えることがたくさんあります。
でもフィンランドに来ると、旅行者だからというのもあってそれを考える必要がない。ご飯はずっと作っていますが自分一人のためだからそんな大したことはないので、どんどん頭の余白ができてくるっていうのは大きいかもしれません。その結果、心の余白ができたという感じです。
「勇気」と「希望」の関係性
前述のマリのプログラム(森の散策)に同行した際にマリが話してくれたことなのですが、自然に触れれば触れるほどいろんな神経系のバランスが整っていくそうです。
森の中であれば、木を見る、木に触れる、木の匂いを嗅ぐ。もちろん虫もたくさんいますし刺されてかゆい体験もしますが、自然の中にいると本音が見えてくるんですよね。日本でも自然の中で過ごす効果・効能は広く知られていますよね。
マリのウェルビーイングコースのプログラムでも彼女はよく「FIND YOUR NATURE」と言います。「あなたの自然を見つけよう」ということではあるんですが、natureという言葉には「自然」以外にもたくさんの意味があるんです。「人間性」も「本質」もnatureという言葉にできるんですよね。
だから「FIND YOUR NATURE」というのは、あなたの「自然」を見つけることだけではなくて、あなたの「本音」を見つけるという意味も含まれるんですよ。
仏教では「自然」を「じねん」とよんで「自ら然る」(人間の作意のないそのままの在り方
)という意味に解釈しています。自然というのは木とか水とかだけではなく、ありのままの自分でいるという意味の方が強いのかもしれないねという話を森の散策中にしていました。
さらにみんなで対話をしていると、「ありのまま」の難しさについての話になりました。
まずありのままの自分を知ることが難しいし、ありのままの自分がわかったところで、それになるのは難しいのではないかと。
例えば、何かしらの勇気を持ってやめるという決断をしなければありのままでいられないかもしれないし、勇気を持って自分の超えなきゃいけない心の壁に向き合う必要があるかもしれない。
ありのままでいるってすごく難しいことだし、勇気のいることだから、実はありのままでいようという話はそんなにキラキラしたことではないねという意見にまとまったのです(笑)。
自然の中にいると、明るくて美しくてキラキラしていて、確かに癒されます。でも、同時にありのままの自分をあぶり出されるから、それと向き合うことになったときに辛さも伴うんですよね。そりゃ勇気を持たなきゃいけないよね、と……。
何とかしてその苦しさを、自分自身の機嫌をとることで解消させなければいけないんだなと実感することになるのです。
他にも、幸せになるためには勇気がいる、自分らしくいるためには勇気を持たないといられないといった話も出て、対話はつきませんでした。
ふと、参加者の女性がマリに「勇気はどこから来るのか?」という質問を投げかけたんです。するとマリの回答がおもしろくて。
「勇気を出すというのは人間の特徴だ」とマリは言ったんです。
それは、勇気を持つためには自分が気づかなければいけないし、自分と対話をするために心にも頭にも余白を持って、それだけの体力がないといけないと。
病気(体も心も含めて)のときに自分と対話するのはすごくエネルギーがいるから、体力のあるときに、余裕のあるときに自分との対話をおこなうのだとも言っていました。
マリは「そうやって向き合うからこそ自分が幸せに生きたいという気持ちや『未来の希望の光』に向かって進むんだ」「それが人間の特徴なんだ」と言っていたんです。
それを促すために余白が必要ということなんですね。
それって「生きがい理論」にもつながるのかなと思います。
「生きがい」と「生きがい感」の違いを神谷美恵子さんが『生きがいについて』という本の中で書いています。生きがい感の定義として、今あるもの、目の前に集中して幸せなものを噛み締めることだけではなく、それに加えていかに未来への希望を持てているかどうかだとされています。
幸せになるためにはどうすればいいか?ということに対して、フィンランドでもいろいろな文献でも仏教的な思想でも、「今あるものに集中する」「今あるものを大切にする」という感覚がありますね。
本当に幸福感を持つためには「未来に明るい光があるかもしれない」という希望を持つこと。
それが勇気を持つためにもすごく大事なのかなって感じています。
人間の脳ってマイナス思考がベースなので、未来を思えば思うほど人間は不安になるんですよね。それは人間として当たり前ですし、不安を希望に変えられるのも人間の力だと思います。
マリの言葉とわたしなりに感じていることを総合すると、「希望を持たせる力」こそ勇気なのかなと思ったりしたのです。
「勇気をもらう」という言葉があります。勇気を持つことは、自分の中だけじゃないような気がするんです。
一方、覚悟となると自分の中にしかない印象ですよね。
フィンランドの書物にも「勇気を持って」という言葉はよく出てきますし、フィンランド人もよくその言葉を使います。覚悟ではなくて勇気という言葉が多いので、「勇気」は自分のライフデザインを考える上で大事だなと感じます。
「忍たま乱太郎」(アニメ)の主題歌で歌っていることは間違いなかったなって今になって思いました。そう、勇気100%(笑)!
そういえば、時代劇の水戸黄門の歌にも「人生勇気が必要だ」っていう歌詞が出てきますもんね。
フィンランド滞在報告会を予定しています
さて、今回は、余白をたっぷり味わった私が、フィンランドの自然の中で得たたくさんの気づきをお話させていただきました。
いかがでしたか?
10月下旬までフィンランドに滞在しますが、帰国後、今年もフィンランド滞在報告会を実施予定です。
きっと、さらなる学びと、濃い〜体験談、そしてもちろんリアルなフィンランドの最新情報をお伝えできると思います。
エラマプロジェクトのWebサイトやSNSでお知らせしますので、ぜひチェック&フォローしてくださいね!
どうぞお楽しみに!
By 石原侑美(エラマプロジェクト代表)
Interview & Text by nakagawa momo(フリーライター)
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こんにちは。エラマプロジェクト代表の石原侑美です。
今回は、コミュニティ「エラマの森」の住民(会員)さんのファミリーのフィンランド個人アレンジツアーの実施報告をお届けします。
ご家族にとって忘れられない、特別なフィンランド滞在となるよう、約1年前から綿密に準備を重ねてきました。
湖水地方のコテージで過ごす、スローライフ体験
舞台は、夏のキラキラした湖と豊かな森が広がるフィンランドの湖水地方。
今回の旅のテーマは「家族との時間を大切にしながら、フィンランドの自然と文化にどっぷりと浸かること」でした。
今回、私がガイド兼通訳として現地で合流し、まるで親戚のように一緒にコテージライフを過ごしながら、フィンランド流の過ごし方を体験していただきました。
![](https://elama.be/wp-content/uploads/2024/09/makkara-1024x768.jpg)
・フィンランド流のソーセージBBQ「マッカラ」
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・ネイチャーガイドのマリさんと森林浴
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・カレリアパイ作り
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・地元の小中一貫校見学
家族とつながる、自然とつながる、自分とつながる豊かな時間
夜は、暖炉に火を焚きながら、家族水入らずの団らんの時間。
スーパーで買ってきた食材でフィンランドの人の食卓のようなお菓子やおつまみを囲みながら、その日の思い出話に花を咲かせました。
日本の都会の喧騒から離れ、ゆっくりと流れる時間の中で、家族の絆を改めて確認しあったり、自然とのつながりを作る豊かな時間となりました。
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人と出会う
エラマの個人アレンジやグループツアーのどちらもの共通するのが、私が信頼するフィンランドの現地の人と触れ合える機会が多いことです。
私が言語通訳をするのですが、ご家族も現地の方も私を信頼してくださり、私の通訳を通じて心を通わす交流が生まれます。
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人との交流こそ、エラマプロジェクトで大事にしているポイントです。
旅を終えると、「何をしたか」より「誰に会ったか」が強く印象に残ります。個人アレンジやグループプログラムでも、フィンランドの現地の人であれば誰でも良いではなく、「この人に会ってもらいたい!」と思う、ご縁と信頼のある、さまざまな専門分野のフィンランドの方にお願いしています。
旅を終えて
今回の旅は、単なる旅行ではなく、ファミリーにとってフィンランドへの理解を深め、人生を豊かにする学びを得る貴重な機会となったようです。
「子供たちがフィンランドの自然の中で、のびのびと楽しんでいる姿を見ることができて本当に嬉しかった」
「フィンランドの人々の温かさに触れ、改めてこの国が好きになった」
と、ご両親からも喜びの声をいただきました。
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エラマプロジェクトでは、今後も皆様のニーズに合わせた個人アレンジツアーを企画・実施して参ります。
フィンランドの奥深い魅力に触れ、人生の質を変える旅へ、あなたも出かけてみませんか?
フィンランド生涯教育研究家・石原侑美がコーディネートする、ツアーではない、自分だけのフィンランド個人アレンジを受け付けています。
まずはお問い合わせください。
フィンランドに関心をお持ちの皆様へ、エラマプロジェクトから特別なオンラインイベントのご案内です。旅行会社のようなツアーではなく、学びのある充実した内容でフィンランドへ行きたい方、または10月のエラマ主催のフィンランドツアーに興味のある方にぴったりのイベントです。
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イベント詳細:
日時: 2024年8月7日(水)21:00〜22:00
場所: オンライン(Zoomミーティング)
料金: 無料
推奨: カメラ&マイクON(お顔が見えた方が話しやすいので、可能な限りご協力お願いします)
当日の流れ:
フィンランドの基礎知識
フィンランド生涯教育研究家・石原侑美がフィンランドについての基礎知識を解説します。
10月のフィンランドプログラム紹介
2024年10月のフィンランド・オウルツアーについて詳しくご紹介します。
フィンランドのおすすめスポット紹介
フィンランドの専門家が、おすすめのスポットを紹介します。
質疑応答タイム
皆様からのフィンランドの旅に関する質問を受け付けます。
スピーカー:
石原侑美(フィンランド生涯教育研究家、エラマプロジェクト代表)
イベントのポイント:
・フィンランドの文化や教育について深く学べる
・10月のフィンランドツアーの詳細を知ることができる
・フィンランドの専門家によるおすすめスポット情報
・気になる質問に直接答えてもらえる
お申し込み:
こちらのリンクからお申し込みください
https://elamatour2024.peatix.com/view
フィンランドの魅力をたっぷりとお届けするこの機会をお見逃しなく!皆様のご参加をお待ちしております。
エラマプロジェクト
フィンランド生涯教育研究家・石原侑美
こんにちは。エラマプロジェクト代表、フィンランド生涯教育研究家の石原侑美です。突然ですがみなさんが好きな季節はいつですか?
フィンランドでは日照時間が少なくなる時期が長いため、夏はとても貴重な季節とされています。わたしが住んでいる飛騨高山も雪がたくさん降る地域ですので、冬と春・夏の頃を比べると活動しやすさがかなり違います。
エラマプロジェクトでは会員制コミュニティ「エラマの森」を運営していますが、4月末に飛騨高山でオフ会を開催しました。
新緑の季節にあらためて感じた、自然を享受できる気持ちよさとありがたさについて、今回は話していきたいと思います。
体も心も新緑の季節を満喫
エラマの森のオフ会は基本的にフリースタイルです。スケジュールは2白3日でしたが、来たいときに来て帰りたい時間に帰るのもOKといういつも自由度の高い内容にしています。メインの会場は「自然体験施設 太陽の家」で、こちらに宿泊できますし、ご自身の都合に合わせて別の場所で泊まるのも可能です。
何をするかも参加したメンバーで対話して決めたり、ご自身の心の赴くことをしたりと思い思いに過ごしていただける時間が多いです。
今回開催したオフ会は、前回に比べると参加人数が少なかったので、ちょっとした親戚の集まりのような雰囲気になりました。
人数が少なく車の台数に余裕があったこともあり、会場から15分くらいの場所にある温泉に行ったり、30分ほどのところにある公園にみんなで作ったお弁当を持ってピクニックに出かけたりしたんです。
公園のそばには川があって水音が聴こえる中でのピクニックができましたし、まだ桜が咲いていたのでお花見もできました。とても気持ちのいい場所なんですが、わたしたち以外は誰もいなかったのでエラマの森のメンバーだけでその空間をひとり占めという状態になっていました。
東京に住んでいた頃、わたしは虫が苦手だったのですが、飛騨高山に移住して数年が経ち、すっかり平気になっています。
東京から一家で参加していた子どもたちの虫が苦手そうな様子を見て、そんなことを思い出す瞬間もありました。
子どもたちは川遊びは初めてだったそうですが、透明度の高い川に足をつけてみたり、地元の男の子と仲良くなって一緒に遊んだりしていました。また、公園では裸足で芝生の絨毯を駆け巡ったりと子どもたちがのびのびと楽しんでいる姿が印象的でした。
ピクニックから帰ると14時か15時頃で、そこから全員がお昼寝をしたんです。時間もバラバラで30分程度の人もいれば1〜2時間の人もいて、最高は4時間近くの人も!
「まだ寝てるの?大丈夫?」と心配になりつつも、心からリラックスしているんだなとうれしくもありました。
太陽の家に戻ってきてからは、テントサウナに入ったり焚き火をしたりただぼーっとしたりといった時間を過ごしました。庭に出ると草の匂いがとにかく気持ちよく、湿度も低かったので心地よく寝転がれることもあって、そこでも新緑の季節を体いっぱい感じられました。
食事の面でも、太陽の家の管理人さんが山菜を取ってきてくれて天ぷらにしてくれたものをみんなでいただく日がありました。めずらしい種類のものも味わえましたし、山菜が取れる時期は植物の生命力を感じる季節でもあります。
フィンランドには自然享受権というものがありますが、日本でもゼロではないと感じるのが山菜に関してです。採れるエリアやそこに入れる人は限定されるかもしれませんが、普段の生活でわたし自身もその恩恵を受けているのです。
自然や季節の変化に敏感になることで自分の心にも敏感になる
参加メンバーと過ごした時間を振り返ると、あえてすごく深い話をするでもなく、かと言って浅い話をするわけでもなく。みんながほどよく距離感を持ちながら楽しいことをやりながら、一人になりたいときは一人になれる時間もあったんです。
ある程度広くて、建物の中も外も木の香りや草の匂いに溢れている環境があると、常にON状態になる必要はなく、自然にリラックスした状態で過ごせるのではないかと思います。
生命力があるというのは、快活で声も大きくハイテンションであるということではないなと思ったんです。
けっこう穏やかでほどよく元気、ほどよくリラックス、そういうのが元気っていうことなんだろうなとこのとき感じました。
そのためには十分な広さと景色や香りといった「自然」がすごく大事だと思います。
特に新緑の季節は香りが高く、秋だとそういう香りはしません。また、冬だと飛騨高山やフィンランドは雪で覆われるのでさらに香りを感じることは難しい季節になってしまいます。
この新緑の季節は、風の気持ちよさと湿度の低さと緑の香る感じがすごく落ち着かせてくれるという体感がありました。
わたしは飛騨高山に移住してきてもうすぐ4年になりますが、自然の変化、季節や天候の変化にも敏感になりましたし、自分の心にも敏感になってきたという感覚があります。
エラマプロジェクトをやっていることで自分と向き合う習慣があるというのは前提として、季節の変化に敏感になるからこそ、自分が今このままいくと落ちそうだなと感じたときは気持ちに蓋をせず、山に入ってぼーっとしたりしています。
また、ウッドフォーラム飛騨に作ったエラマ図書館に行き、仕事じゃないと断りを入れてソファに座ってただぼーっとするということを積極的にするようになりました。また、それらが手軽にできるような環境に身を置いていることも大きいです。
二十四節気を知ったのも飛騨に来てからでした。飛騨は日本の真ん中なので、ここは二十四節気通りに季節が変わっていくんです。
その意味通りに季節が変わっていくのがすごくわかるので、数週間ごとに季節が変わることがより自分の心にも敏感になる要因なのかなと最近思います。
自然があればあるほど、周りに人がいなければいないほど自分に集中できると思うんです。冬だったら外に出て歩き回るというのが難しいので、すぐ外に出られる新緑の季節はそういった面でもいい時期ですよね。
都会で暮らしているから自然に触れるのが難しいと感じる場合でも、少しでも自然があるところに出かけてみるだけでも十分だと思います。
エラマプロジェクトで体験できること
オフ会以外にも飛騨高山でイベントを実施することがあります。講座やイベントが決まった際はホームページでお知らせしますので気になった方はチェックしてみてください。
また、エラマプロジェクトではフィンランド現地ツアーも開催しています。今年は9月と10
月に予定しており、ヘルシンキやタンペレでサステイナブルな社会を学ぶプログラムや北欧のシリコンバレー、オウルで働き方やウェルビーイングを学ぶプログラムを準備しています。
詳細をご覧になって少しでも興味がわいた方はぜひお問合せください!
By 石原侑美(エラマプロジェクト代表)
Interview & Text by nakagawa momo(フリーライター)
こんにちは、いけかよです。
去る2024年3月20日、3泊4日のスペシャルなツアーが、岐阜県飛騨高山で開催されました。
これまで、フィンランドで2回ツアーを実施してきたエラマプロジェクト。今回は、飛騨高山に生活拠点をおく代表の石原侑美が、自ら暮らし、さまざまなものを見て聴いて感じているその地域を舞台にしたスペシャルなプログラムを作り上げました。
その名も「地域(ローカル)でウェルビーイングに暮らす体験ツアー in 岐阜・飛騨高山」。
さまざまな体験を通じて「学び」をお届けしているエラマプロジェクトですが、今回のツアーはエラマプロジェクト7年の歴史のなかでもひとつのマイルストーンともいうべき特別なものとなりました。
もちろん、すべての経験がスペシャルで唯一無二ですが、どうやら代表の侑美さん的には今回の経験をしっかりじっくり記録として残しておきたいという強い衝動があったようなのです。
ということで、本メディア「よむエラマ」の編集長のわたし、いけかよと侑美さんとの対話を、臨場感そのままにお届けしたいと思います。
人生の分岐点に立つ人が集まった
いけかよ
今回のツアーのきっかけは?
ゆみ
高山市の地域課題解決プランのコンテストがあるからそれに応募してみませんかっていわれて、提案したのがこのツアーでした。内容は言ってしまえば「移住体験ツアー」なんですが、地方創生は移住だけじゃなくて、いかに関係人口を増やすかが大事だから、それを組み込んだツアーということで、高山市から奨励賞をいただいたので実施に至ったという感じ。
でも、もっと個人的なところで言うと、私がフィンランドに行って自然の素晴らしさを知った、そして高山にも移住して4年経った。そこで体験してきたことを、ごく一部ではあるけど4日間にぎゅっと凝縮して体感してもらうことで、私の地元愛を呼び起こすことにもなるだろうし、参加者さんが「自分もこういうことをやりたい!」って思ってもらえるようなツアーにできたらという思いもあったんです。
いけかよ
なるほど。実際やってみての手応えはどんな感じでした?
ゆみ
やっぱりやる直前まで「これでいいんだろうか」とか「人集まるかな」とか「ツアーが目新しすぎてみんなイメージ湧かないかな?」とかいろんな不安がありました。でも「ウェルビーイング」という言葉はいま注目されてるからいけるんじゃないかという一縷の望みも持ちながら、できる限りのことをやって。
そして、参加者は女性6名。20代から50代まで幅広くて、東京、三重、大阪、富山、愛媛、あとは岐阜からと、いろんな地域から来てくれたんです。
結果、やってみて、フィンランドまで行かなくても国内で、飛騨高山でこれだけの素晴らしいものができるんだっていう確信を得られました。それは直前まで不安だったから自分なりにベストを尽くしたからこそ。
そして参加者さんから返ってきた反応がほんとうにみんな喜びに満ち溢れていて…!ツアーの最後にはやっぱり半分以上の人が自分のために浄化の涙を流すんですよね。
それは自分の人生に向き合えているということと、やっぱり人との出会いがあったから。飛騨高山で活躍するいろんなキーパーソンに出会ってもらったんですが、その人たちも性別も年代もバックグラウンドもさまざまで、その出会いのなかで参加者さんたちはどんどん自分の内側に目を向けていったんです。
こういう「内省」ができるプログラムを、国内でもできるんだっていう強い確信を得られました。
いけかよ
そうなんですね…!じゃあ、今回のツアーの目的としては「飛騨高山に移住します!」って言ってもらうこと?
ゆみ
を、やめたんです。そういうプレッシャーのもとでやるのは違うなと思った。だから目的は「地方で豊かに暮らすことを考える」とか、「地方都市においてウェルビーングな社会作りを考える」とか、移住までとはいかないけど地方を拠点に活動したいと思ってもらえるようなものにしたんです。
いけかよ
じゃあ本当に関係人口っていうのがキーになるんですね。
ゆみ
そう。高山市さんも「関係人口を増やしたい」ってすごく言っていたし。
いけかよ
参加者さんたちはどんな思いで参加してくれてたんでしょう?
ゆみ
それがいろいろでめっちゃ面白くて!
ひとりはもちろん「ウェルビーイング」って言葉に反応されて、フィンランドの専門家からそれを学びたいっていう人。
もうひとりはフォルケホイスコーレ(19世紀にデンマークの農村を中心に発達した民衆の民衆による民衆のための成人教育機関。「人生のための学校」などと表現されることもあり、その価値やあり方が近年注目を集めている)的なプログラムを日本のいろんなところで参加している人。このプログラムはフォルケホイスコーレ的なものだと認識して来たそう。
他にも「以前飛騨高山に来た時にとてもいい場所だと思って、インスタを見てたらこのツアーを見つけたから、内容はよくわかりませんけれども申し込みました」っていう方もいたり(笑)。
いけかよ
いいですね。フットワーク軽い!
ゆみ
そうそう(笑)。そういういろんな観点のいろんな層の人が来たっていう感じでした。
でも共通項があるとしたら、やっぱり今が人生の分岐点だとご自身の中で思われてる方が来たような感じではあったかなと思います。
いけかよ
そこ、フィンランドツアーの参加者さんと似てますね。
ゆみ
そう!そこがすごく面白いなと思った。
スペシャルな「地産地消」
いけかよ
それで今回のハイライトは?
ゆみ
それ選ぶの難しいですよね…。
まず、初日に雪がすっごい降って、私たちが泊まった太陽の家なんて50cm積もったんです。飛騨の人からしても3月にこれだけ降るのは珍しいと。「大丈夫かな、予定変更しなきゃいけないかな」って思ったんだけどもうみんな喜んで!他県の人は雪なんか見ることないからみんな舞い上がっちゃって、喜びに満ちてたのは雪があったからっていうのはあると思うんです。
だからもういきなりハイライト(笑)。
いけかよ
そうなんですね!もういきなり(笑)
ゆみ
そう!太陽の家は、やっぱりみんな最初入った瞬間「うわー!」ってなりましたもんね。
いけかよ
あそこは場の持つ力がすごいですよね。
ゆみ
そう!だから今回プログラムを多くを太陽の家でやれたことも大きかった。自然や木の匂いにずっと触れ続けながらやれたから。とにかく外でみんな雪で遊びまくって、めっちゃ楽しそうっていうのも良かったんですよね。
あとは、ごはんにこだわったこと。
もう一つのこのツアーのテーマが「地産地消」だったから、地産地消のものを食べようと。
この、食がめっちゃみなさん喜んでいただいたところで。
いけかよ
食はすごく大事!!普通の旅でも食ってすごい重要度高いですもんね。その土地でしか食べられへんもんって絶対食べたいし。
ゆみ
ですよね。
プログラムの中で、ワークショップが大事なことはわかってるけど、でもやっぱり喜びを味わいたいわけですよ。ワークショップがあるから食の喜びがあるし、食の喜びがあるからワークショップの喜びもわかってくるっていうことで、こだわったんですよね。
いけかよ
うんうん。しかも作り手からじっくり話が聞けるっていうのもいいですよね。
ゆみ
そう。それぞれでクリエイティブに飛騨の地産地消をやっている人たちにお願いしました。その人たちに、自分の人生の話をしてもらって、そのひとりがEarth to Tableの河野美紗ちゃん。
フリーランスシェフの河野美紗さん。オランダのアムステルダムで地元レストランと都市農園&食廃棄プロジェクトに5年ほど携わったのち、現在は飛騨地域で、「五感に響く食体験」と「地域コミュニティ」をテーマに、店舗をもたずに料理と食企画を行っている
ゆみ
なんで飛騨でEarth to Tableをやってるか、オランダで何を見てきたのか。それを踏まえて食と農のコミュニティを飛騨でどうやって実現してるかという話をしてくれた後に、その美紗ちゃんが作った料理を食べるという。
しかもそれがおいしいっていう単純な味覚だけじゃなくて、聴覚や視覚でも、そして美紗ちゃんが体験した飛騨のこともオランダでのことも疑似体験した上で食べてるような感じ。だからおいしいもの以上の咀嚼があって、お腹いっぱいになったっていう感じでしたね。
ゆみ
そして、我が家、石原家にも来てもらって、お義父さんお義母さんもいっしょに宴会して。カブを採ってきてそれをオーブンで焼いてただ食べるとか。
いけかよ
めっちゃいい!!もうお腹すくー!
ゆみ
ははは!でしょ?お腹空くでしょ?そうなんですよ(笑)
これが本当にやりたかったこと
ゆみ
参加者の1人は石原家の宴会のときにお義父さんと「私はずっと長女としてきょうだいとかお父さんお母さんの面倒を見て…」っていろいろ話されてて。そのときにお義父さんが「もうあなたの道に行ったらいいんだよ」って言うんです。それがね、彼女にとっては、他人からなんでもない温かい言葉を言われたからこそ、すごく心にぐっときたらしくて。
でも、温かいからこそ、全てのプログラムが、食べ物も建物も会う人も含めて全てが素晴らしいすごく非現実な空間にいるからこそ、自分のネガティブなところが出てくる瞬間が本当に辛かったと…。
これは他にも言ってる人いたんですよね。
いけかよ
そうなんですね…。
ゆみ
前に飛騨高山でリトリートをやった時もそういうこと言われた人がいて。
リトリートでも今回のプログラムでも自分の人生を振り返ってもらうワークはやるんですが、やっぱりそれをしてるとトラウマが出てくる人ももちろんいたりするんです。それに、トラウマを克服してしてるつもりだったけど、あまりにも美しい、いいものを食べるから、ショック療法のリバウンドじゃないけどそういう感覚に近いものが出てくるような…。
いけかよ
たとえば普段、ジャンクフードばっかり食べてて、こんな美しい食べ物があるのに自分はなにやってんねやろみたいな気持ちになる感じでしょうか?
ゆみ
近いかもしれない。ジャンクフードばっかり食べてて体にいい野菜を食べると、逆に体にぶつぶつができるみたいな、そういう感じ。
いけかよ
好転反応的な?
ゆみ
ああそうそう!まさに好転反応。しっくりくる言葉だと思います。
いけかよ
気持ちの好転反応がいっぱいあったわけですね。
ゆみ
ありましたね。みなさんそれぞれのレベルでそれぞれにあったみたいで。
いけかよ
なんかちょっとわかるような気がする。聞いてて胸が痛むなあ。
ゆみ
そう。わかる人はすごくグッとくると思う。
それが一番わかったのが、ツアー最終日に太陽の家で最後の振り返りをした時に、やっぱりみんなそれ(好転反応)が「あったんだー!」っていう涙があふれて。逆に「やりたいこと見つかったんだー!」っていう喜びの涙の人もいたし。それぞれのその振り返りがそれぞれで作用し合ってましたね。
ツアーが終わって高山駅で解散した後、まだ名残り惜しい、話し足りない、もっと語りたいっていうので、その後1人以外はみんなそこで一緒におそば食べて(笑)。
他にもツアー終わってから改めて飛騨にもう一回来てくれた人もいてね。
でも、これまでも飛騨でリトリートを何度かやってきたけど、今回違うのは本当に関係人口になりそうな人たちがいるっていうこと。これからどんどん具体的なつながりが増えていきそうなんです。今回つながりができて、そこからまたどんどん別の関係人口が生まれそうな要素がある。
だから、今回のプログラムで自分の人生を共有するからこそ、思いっきり自分の「やりたい」っていう気持ちを信頼して出してもらえてるんだなっていうのをすごく感じます。関係性が深く強くなるからこそ、長く関係性が続くような感覚になるというか。
いけかよ
ゆみさんの作ってるプログラムって、「ツアー」だけどでもなんかちょっとレイヤーが違いますよね。
ゆみ
そうですね、旅なんだけど学びの要素がしっかりある。それは深い対話を自分の中でやるようなプログラムですね。
いけかよ
そうだと思います。適切な言葉を見つけるのがすごく難しいけど、トリートメントな感じがするんですよね。そういう要素がすごく強い。
ゆみ
だからこそ、参加する人は怖い部分もあるのかもしれないですね。自分がどうなっちゃうのかな?って。
美しいものに触れて、雪だったのもあってよけい非現実感が増してて。それもあって今回は余計にみなさん内省モードになれたのも確か。雪があることですごく深い対話が生まれたのは間違いないかなって思います。
なにより今回は、本当に来たいと思って来てくださった人しか来てない。「どんな感じやろ?」じゃなくて「行くんだ!」っていう決意を持って来てくださった方ばっかりだった。エラマプロジェクトで、こんな満足度の高いプログラムができるんだっていう自信になったツアーでしたよ。
いけかよ
そうなんですね。フィンランドよりも国内ツアーの方が参加者はやっぱり勇気がいるのかもしれないですね。
ゆみ
そうですね。海外行く方が皆さんイメージできるし、いっぱいお金貯めていくぞって気になるんだけど、国内って行きやすいって思うからこそ、ハードルは高いんですよね。
いけかよ
海外だったら、なんかとりあえず飛行機乗って行くだけで、もう達成感あるでしょ?
でも国内って、やっぱり自分がある程度のお金とか時間とか、ペイしたものがあるんだったらなんらかのリターンはほしいって思うから、なんにも面白くなかったなんて絶対いやですもんね。否が応でも何かを得て帰ろうと思ったら、国内の方が自分の感性をもっと研ぎ澄ませないといけないし、特にゆみさんが作るこういうプログラムではすごく自分と向き合わされると思うし、心の柔らかい部分もすごい刺激されるし。それは結構タフな経験だと思うわけですよ。
ゆみ
そうですね、いい意味でも悪い意味でも。悪い意味っていうのはちょっとネガティブな感情に陥ることもあるかも、っていうところだけですけどね。
いけかよ
そう。でもそれは多分人生においては避けて通れないとこですよね。そういう意味でも、ゆみさんのつくるプログラムはトリートメントっぽいんですよね。
ゆみ
トリートメント。リトリートではなくてトリートメントね(笑)。
いけかよ
言葉遊びみたいだけど!(笑)
でも、トリートメントもデトックスするでしょ?コリをとったり汗を出したりとか。ケアをして悪いものが出るからすっきりするわけだし。ってなると、悪いものがどこにあるのかわからないと出せないし。悪いもの出さないと気持ちよくなれないし。ってなったらやっぱりトリートメントの要素が強い。それが自分の中にあると思うからトリートメントしたいわけでしょ?
ゆみ
ああ、そうだと思う!それはあるのかもしれないですね。
ああ、だから、これが本当にエラマプロジェクトでやりたかったこと。まさにこのツアー!
人生も見つめてるけど自分の次のアクションも、ちょっと「やりたいな」って気が起こってるような状態。これを日本でやれた!
いけかよ
うんうんうん。だから、2Dの人が3Dになる瞬間に立ち合うみたいな。
ゆみ
あーー!そう!そういうことです!
いけかよ
それがいわゆる分岐点なわけですよね、人生の。
ゆみ
で、思ってるだけじゃなくて行動するっていうのが大事ですよね。2Dから3Dの行動。
これを継続的にやっていきたい。私の拠点が高山にあるから高山でやってるけど、拠点になる方がいらっしゃればどこでも。軽やに、いろんなとこでやれるっていうふうになれるといいなって思います。
いけかよ
そうですよね。それぞれの土着の人がそれぞれの土地に愛情を持って。
ゆみ
あ、そう!愛情を持って、が大事!地域に対する愛情があればできる。
いけかよ
素晴らしくない土地なんかどこにもなくて、全ての土地が素晴らしいわけですもんね。
あたしも初めてフィンランドに行った時に、日本のことすごい考えてた。
今回のツアーの参加者の人が「自分の地元のことを知りたくなった」って仰ってたって言ってたけど、それと同じだなって。それぞれの土地を比較する意識もあったりはするけど、高山もフィンランドもすでに地域ブランドがありますよね。何もかもが美しすぎて圧倒されるけど、なんか、それだけで終わりたくない自分もいるんです。フィンランドが素晴らしくて日本が駄目っていうのは違うはず!みたいな。
だから、やっぱり幸せと不幸せみたいなこともそうなんですが、やっぱり人間って比較で相対的にしか物事をジャッジできないでしょ?そのものだけでも十分美しいんだけど、これがいかに美しいかっていうのをわかろうと思ったら、比較する対象がないとわからなかったりする。多分こういうふうに場所を変えることで、自分の土地と高山の比較で地元の素晴らしさをわかっていくんだろうなって。
ゆみ
ああ、そうですね。それはそういう指標になるような場所を訪れることによって、ああ、ここがいいなって、じわじわと来る感覚になるんでしょうね。
いけかよ
だと思います。あと自分自身の心の中の部分でも、来る前と来てからの心の変化が比較になりますよね。
ゆみ
そうですね。
いけかよ
それでいろんなものがあふれてきた人もいたんだろうなと思います。だから、自分の中の汚い部分が辛かったみたいなとこも、多分そこだと思うんですよね。
ゆみ
うんうんうん。それはあると思います。そう、だから、これがエラマでやりたかったこと!1つの完成って感覚ですね、これは。
焚き火を焚く仲間をつくりたい
いけかよ
ゆみさん的には、このプログラムで参加者さんたちにどんなものを持ち帰ってもらいたかったんでしょう?
ゆみ
そうですね…「持ち帰ってもらいたい」があるとすれば、仲間得た!みたいな感覚かな。
今回は、自分が普段いるところでモヤモヤしてる人たちが来たと思うんです。
例えば、飛騨とはまた別の田舎で暮らしてるけど、やっぱり地元では自分のやりたいことは絶対に広がらないっていうモヤモヤ感とか。
自分はこれを頑張ってやってきてるけど、本当にいいのかなとか。
そんなモヤモヤ感を持ってきた時に「あ、この場にいる人たちだとなんかこのモヤモヤが共有できる」って思えるような…。本当にずっと日本社会とか政治の話とかしてましたもんね(笑)。
でも、それは文句じゃなくて「モヤモヤを置く」っていう感じでした。私もモヤモヤしてるけどあの人もモヤモヤしてるんだなってただ出し合うだけ。
でも、集まればちょっとは光もあるかもしれないっていう希望というか、そういうものが私が持ち帰ってもらいたかったことかなって思います。
で、私がやりたかったことは、そういう仲間がほしかったんですよね、多分。飛騨高山でやる人ももちろんそうだけど、日本中で、それこそ「地域で暮らすウェルビーイングな暮らし体験ツアー」みたいなものを、それぞれの地域でやってもらえるような仲間がほしかったんだろうなって思う。
いけかよ
なるほど。「フィンランド教育を全部学ぶコース」やった時も仲間がほしかったって気づいたって言ってましたもんね。
ゆみ
そうですね。なんかやっぱり仲間ほしいんやな、私。
ゆみ&いけかよ
あはははは!(笑)
ゆみ
でもそれが社員とか主従関係とは違う。本当に横の繋がりで仲間がほしいというか…。多分それがすごく強い想いだとは思います。
いけかよ
なるほど。仲間を集めて侑美さんが作りたい理想の世界っていうのはどういう世界なんでしょうね?
ゆみ
そうですね…。それこそ、絵的に言うと日本列島の真ん中の飛騨高山に焚き火が上がってて、富山、大阪、和歌山、名古屋、北海道とかでも焚き火してて。オンラインでもいいし、リアルでもいい。みんな焚き火囲んでゆるっと、お酒とかコーヒーとか飲みながら語れてる世界でありたい。それを実現したいなっていう、本当にそれだけ。
それが別に24時間じゃなくても、そういうふうな瞬間があったら、いつもいがみ合ってるかもしれないけど焚き火の前だったら仲良くなれるみたいな。
いけかよ
休戦する感じですね。
ゆみ
あ、そうそう!休戦もできる。そういう焚き火を囲むみたいな世界になるといいなって。一瞬でもいいから。定期的にそういうことできる世界があるといいなっていう感じ。
いけかよ
なるほど、焚き火。焚き火をすること自体はすごくシンプルなことですよね。でも「いい焚き火」をしようと思ったら下準備とかすごい大変ですよね。
ゆみ
そうそう。前提を共有するとか共通言語を持つとかね。
いけかよ
価値観も違っていいけどぶつからないように受け入れる体制がいるし。
そしてまず平和を愛している人たちじゃないとダメだろうし。
ゆみ
ほんとそうですね。
いけかよ
そういう文化作りをしてるんですよね、エラマプロジェクトは。
ゆみ
Exactly.そういうことでございます。
(対談ここまで)
いかがでしたか?
今回のツアーは、侑美さんご本人にとっても、エラマプロジェクトにとっても、特別なものだったのだなということが少しでもおわかりいただけたのではないでしょうか。
同時に、つねに試行錯誤と模索を繰り返して進歩しているエラマプロジェクトの真に迫る様子も感じていただけるととても嬉しいです。
もし、わたしたちに共感していただける方がいらしたら、いつでも遊びに来てください。そしてあなたといつか焚き火を囲める日がくれば、こんなにうれしいことはありません。
これからのエラマプロジェクトにも乞うご期待、なのです。
では、また!
Text by いけかよ(よむエラマ編集長/エラマプロジェクトCPO)
こんにちは。エラマプロジェクト代表、フィンランド生涯教育研究家・石原侑美です。2024年の年明け早々に「フィンランドの教育を全部学ぶコース」を開催しました。7年間の研究内容を参加者のみなさんに共有し、講座を終えたわたしが感じたことをあらためて振り返ってみようと思います。
このコースのゴールとは
講座は1月の毎週日曜日の午前中に計4回に渡りオンラインで開催しました。このコースの最大の特徴は、最終的に課題としてフィンランドの先生やコーディネーターのように参加者自身が授業、カリキュラムやプログラムを作って提出するというものでした。
第1回目ではフィンランドの教育について基本的な内容をお伝えし、日本とは違うフィンランドにおける「教育」の定義を体感していただくワークもおこないました。
第2回目は「教育メソッド」、第3回目は「キャリア教育と生涯教育」、第4回目は「教育・教員の学びと評価方法」をテーマにお話しました。
今回の分野は日本語に訳されているものがあまりありません。あったとしても、現場で実践できるレベルのものになると学術的すぎて日本語で学ぶのは困難でした。そこで、例えば第3回目ではPhenomen Based Learning(教科横断型の事象ベース学習のこと。以下、PhBL)の授業をしっかり体験していただきました。
参加者にとってはそれがどんなものかはっきり分からないと思ったので、子どもたちが受ける授業を実際に受けてもらったんですね。
体感してもらったことで腑に落ちる感覚があったかと思います。
参加者は、学校の先生、フリースクールを運営されている方、子どもたち向けの自然体験プログラムを作っている方といった教育的サービスに関わっている人や、習い事のお教室を運営されている方、講座を作るお仕事に携わっている方など、各地からお申し込みをいただきました。
このコースで絶対にお伝えしたかった内容が、3本軸となるPedagogy(ペダゴジー)、PhBL、アントレプレナーシップ教育についてです。
昨年開催した単発の対面講座でもPedagogyについて触れる機会はありましたが、そのときよりもさらに具体的にお伝えしました。また、学術的な内容をわたしなりに編集して授業を作るためのチェックリストを作成し、みなさんに共有しました。
このコースの内容は難易度が高かったと思うのですが、誰もドロップアウトせずに学んでいただけて、学ぶ体力がある人がすごく多かったのが印象的でした。
授業を作るために必要な考え方、基本的なことはお渡しできたかなと思います。
Pedagogy、PhBL、アントレプレナーシップ教育についてご興味が湧いた方は、今後も教育をテーマに単発の入門講座を開催予定ですのでよろしければご参加ください。
※東京:https://elama.be/workshop-event/tokyo202404_education/
※大阪:https://elama.be/workshop-event/osaka202404_education/
フィンランドの教育を日本に導入するのは難しい?
参加者の多くは、現状の日本の教育に対してかなり疑問を持っていらっしゃいました。教育サービスなどのお仕事に直接従事されていない方も問題意識を持っていて、「こういう授業なら受けたかった」といった感想もありました。
現状の教育について疑問を持っているからこそ「こういった内容や方法がいいのでは」とそれぞれお考えになっていたようです。そして今回フィンランドで実践されていることを知り、体験したことで、「答え合わせができた」「励ましをもらった」と話されている方が多かったです。
ご自身が考えていたものとまったく違うという印象は持たれなかったのです。
最後の課題提出については、みなさん現場が違うため内容はもちろん異なるものになりましたが、第1回目に共有したチェックリストに沿ってしっかり授業プランを考えていただきました。またすでに実践されている内容をリストを元にブラッシュアップされている方もいました。
フィンランドの教育が良いと言われるのは、自分で考える力を育む、周りと協力しながらやっていける力を育んでいくといったことを、先駆者的にやっていたからだと思うんです。フィンランドではすごく特別な教育をしているわけではないというのが大事な点なんですよね。
おそらく日本の教育現場でも、これがPedagogyだとかこれがアントレプレナーシップ教育であるとか意識はされていないけれど実際やっていた、みたいなことが実は多かったりするのではないかと思います。
フィンランドの教育を特別視するのではなく、みなさんが望む理想の教育や試行錯誤しながら実践されているものについて答え合わせをするような感覚でフィンランドの教育と向き合っていただくのがよいのではと考えています。
福祉制度が違うから、国が違うからを理由にできないものではなく、やろうと思えばできるんですよね。もちろん制度のせいでやりにくさ、やり易さが出てくるのは間違いないのですが、根本的なところはそんなに変わらないと思うのです。
学ぶ習慣が大切
教育現場におけるより良い実践のために国の制度を変えていくことは必要ですし、そのための働きかけも大事だと思うのですが、わたしたち自身、大人がまず、学びって楽しいなと体感しないと何も変わらない気がします。同時に、学ぶ習慣をつけることがすごく大切だと感じています。
学びというのは図書館に行くことだけではないですし、資格勉強をすることだけでもありません。単純に、今日1日を振り返って感じたことや気づいたことを日記に書くのも十分学びですし、それはPedagogyの定義の中にもあります。「振り返り」も学びのひとつなのです。
もっと軽やかに学びを楽しむのが習慣になるといいなと思います。そして、エラマプロジェクトをやっている理由、フィンランドの教育についてお話をしている理由もそれなのです。
教育の内容はアメリカの分野もありますしヨーロッパの分野もあるのですが、それらは意外と日本語に訳されているものは多くありません。
特にフィンランドのものに関しては本格的な内容のもので日本語版はそんなに多くないんです。
フィンランド教育を研究していく中で、わたしが通訳者となり、今後はさらに言語面だけでなく日本の現場に当てはめるとどうなるかというアイデアを出しやすいような形でお伝えしていくことをやっていきたいと考えています。
それは先生だけではなくて親御さんが立ち上げるサークルでもいいですし、リタイアされた方たちが始めるフリースクール的なものでも、シニア向けのコミュニティでも当てはまります。そういう学びの場やコミュニティをどう運営していくのかにも関係があると思っています。
学びそのものは、学校の中だけで完結しなくなってきていますよね。学校外の人や企業と連携するとか、地元の人に関わってもらうなど、そのコーディネート力もこれからすごく大事になってきます。ですので、みなさんがご自身の活動に落とし込めるように事例や文脈を紹介していきたいです。
今回のコースを終えてみて「学び」の可能性をますます感じました。学びに対するポテンシャルやモチベーションが高い人が多かったというのもあるかもしれませんが、豊かに自分の人生を変えられるのは学びがきっかけになることが多く、自分の人生を描くには学びがベースになるのです。
学んでいるとき、学びを作っているときが大好きだなとあらためて感じました。
このコースを開催した理由も、「仲間が欲しい」というのがどこかにあったんですよね。「学びの場を作っていきたいと思っている、学びの内容もフィンランドの教育で実践されていることをやりたいと思っている人たちと仲間になりたい」。そういう思いがあったんです。
それは直接エラマプロジェクトに関わるのではなくても、つながりを持つという意味でも「仲間」が欲しかったんです。これからもそういう仲間とつながるために、コースをブラッシュアップさせながら続けたいなと思っています。
フィンランドで学びと対話を深める
最後に、参加者の感想も一部ですがご紹介しておきます。
満足度が高かった理由として、
“現時点で他の講座や文献では知り得ないフィンランド教育の手法や考え方を学ぶことができたため。また講座の内容がとてもわかりやすく興味深いものだった”
“私が「教育」に対して思っていた偏見が、意見の一つに変わり、私の中でもっと柔軟に考えていいものという選択肢が生まれたため”
といった感想を記してくださった方もいました。
また、フィンランドの教育では自己評価も採用しており、一方的な評価に偏らないシステムを特に印象に残った点として挙げられている方もいらっしゃいました。フィンランドでも評価方法に関する議論は止んでおらず、参加者のみなさんにも対話していただきました。た。
今回開催したコースは「エラマの学校」のプログラムのひとつです。いつでも自由に気になる学びに参加していただけますので、その他の情報につきましてはこちらからご確認ください。
今年は、フィンランドツアーを3本予定しており、今月末から説明会を実施します。
実際に現地に足を運んでみたいと考えたことがある方は、2024年フィンランド現地スタディプログラムの詳細をぜひご覧ください!
By 石原侑美(エラマプロジェクト代表)
Interview & Text by nakagawa momo(フリーライター)