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Elämäプロジェクト

【よむエラマ】自分にも他人にもやさしく。「EVERYDAY SISU  フィンランドの幸せ習慣」 レビュー

「フィンランドの幸せメソッド SISU(シス) 」という本を覚えていますか?

この記事で、私がブックレビューを書いた書籍です。

前作では、フィンランド人の精神的な強さや困難に立ち向かう力を表す言葉である「SISU(シス)」を紹介しています。著者のカトヤは、フィンランドの文化やライフスタイルから生まれた「幸せメソッド」を通じて読者にSISUの力を伝えています。サウナや自転車通勤、アイススイミングなど、彼女はもちろんフィンランドの人が実践している具体例が紹介されています。

私が意外だった点は、研究者へのインタビューでした。彼女はSISUやポジティブ心理学の研究者にインタビューしたり、研究論文の抜粋などが書かれていて、科学やエビデンスに基づく考えを紹介し、ジャーナリストでもある彼女の書籍は、地に足のついた、信頼できる書籍という印象もありました。

そんな彼女の処女作のブックレビューを公開した頃に続編が出版されました。今回はその続編である「EVERYDAY SISU フィンランドの幸せ習慣」のブックレビューです。

4年の月日

前作「フィンランドの幸せメソッド SISU」は22カ国で翻訳され、世界中で読まれました。しかし、この大成功が裏目にでます。書籍や彼女自身への評価を過大評価であると感じ始め、燃え尽き症候群のような状態になったり、さらにプライベートでは離婚し、子供を1人で育てることになり、精神的に落ち込んでいったようです。

さらに追い討ちをかけるように新型コロナのパンデミックです。寝たきりのような重度のうつ病となった、と書いてありました。1冊目で、彼女の生真面目さやがんばりすぎちゃうところを感じていたのですが、悪い方に出たのかなと想像しています。

今作は、「しくじり先生カトヤからの学び」なのだと思います。彼女のように落ち込むことなく、SISUをポジティブな強さに変えてほしいという願いがあるように感じました。どん底とも言える困難な状態から、自分の中にあるSISUを再発見して強靭にし、生きる力を取り戻した、彼女のリアルな変化を感じられる内容になっています。

ただ、今回の本は、彼女のどん底部分の説明があったりして、前回よりもちょっと話が重くてページが進まない前半でした。

また、前作ではカナダ育ちの彼女が、SISUに出会って取り入れていく過程が書かれていたので、自分にフォーカスしていたのに対し、本書では、自分の置かれている環境や人間関係に対してSISUをどのように活用できるか、みたいな視点が書かれています。

(と思ったら、翻訳者の後書きにも似たようなことが書かれていました)

カトヤの変化や4年の月日で、SISUの定義や理解が深まっていました。

前作を読んだ私のSISUの定義は「困難な状況でも、自分を信じて、諦めずに挑戦する強い意志」でした。本質的なマインドセットの部分は変わらないものの、SISUの女神ラハティ教授は、「正しいことのために立ち上がり、誠実さを持ち、自分の行動に責任を持つこと」という考えを付け加えています。

この後半部分が、地球や社会のための行動として、本書では「サスティナビリティ・シス」として書かれています。

また、SISUの多面性にも触れていて、有益なSISUと有害なSISUがあると説明されています。カトヤは有害なシス(自分をきつく追い込んでしまう)の方に進んでしまったことが想像できます。SISUは素晴らしいスキルではあるものの、上手にコントロールしないといけないようです。

アイススイミングがカトヤを救った

どん底の彼女を救ったのは、アイススイミングでした。本の中で、彼女も「アイススイミングが回復の鍵となった」と書いています。「どんなにひどい気分でも、冷たい水に浸かれば心も身体も元気になると、心の中ではわかっている」とありました。

自分がどんな状態にあっても、元気になれる方法を理解しているということは、やっぱり彼女はきちんとSISUを持っていると思いました。そして理解するだけではなく実行に移す力もまたSISUであり、弱っていた状態であったとしても、彼女の心の中には過去に鍛えたSISUが小さく燃え続けていたのを感じました。

彼女のにとってのアイススイミングは、この5つに集約されると思います。

・冷たい水に入ることで感じられる、心地よさ

・ホルモンによって気分がよくなることが科学的にも証明されている

・安全な居場所が確保できること

・仲間との繋がりを感じられる

・水の持つ癒しの力を感じられる

物理的な心地よさと、心理的安全性やつながりや癒しを感じられるのがアイススイミングなのですが、同じようなものがあれば、アイススイミングでなくてもいいのかなと思いました。

私は趣味でフットサルをしていますが、心地よく汗をかき、信頼できる仲間がいて、ゴールを喜んだり、すごいプレーに驚いたり、走ることでストレスを解消できると思っています。練習後の飲み会で、みんなで涙が出るぐらい笑ったりすることもありますしね。彼女にとってのアイススイミングは、私にとってのフットサルなのだと思います。

みなさんにも、カトヤのアイススイミングと同じようなものがありませんか?

他人も自分も大切に

今作で一番印象的だったことは、「他人を大事にするように、自分も大事にしていい」というメッセージです。

友達や身近な人が困っていたら、助けようと手を差し伸べたり、傷つけないように優しい言葉で伝えたりする人が多いと思います。だけど、自分には多くを期待したり、高いハードルを要求してしまうことはありませんか?

そして、「成果が出ない」と落ち込んで、自分のことが嫌になったりすることもあると思います。でも、他人に要求したり、伝えたりしないことを、自分に言う必要はないんです。それは「セルフコンパッション(自分への思いやり)」という言葉で表現されていて、「自分の長所も短所も受け入れて、自分を尊重することだ」と説明されています。「自分に厳しく、他人に優しく」を美徳として育った私には、この言葉と概念はとても印象的でした。

自分の中での思考だけではなくて、他人が自分を攻撃してきた時にも、それをそのまま受け取らないことも自分への思いやりだとありました。自分の悲しみを減らすこともまた、自分を大切にする方法であることは、私の想像にないところだったので、大きな学びでした。「自分にもやさしく、他人にもやさしく」生きていきたいものです。

大丈夫じゃなくても大丈夫

実は上のブックレビューで書ききれなかったのですが、この本で、座右の銘にしたくなる言葉に出会いました。

「大丈夫じゃなくても大丈夫」

私たちは、「自分は大丈夫だと思いたい」と思いすぎてはいないでしょうか。

「大丈夫である状態」を「理想や、あるべき完璧な姿」だと思い込んでいないでしょうか。

困難に向き合った時に思い出せるように、心の引き出しに。

Text by ひらみなおこ(ふつうの会社員)

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