なぜフィンランド×和文化なのか?
こんにちは、橘茉里です。
私は国語教師として古典や日本文化の授業を行っている経験、そして香司(お香の調合師)としてお香文化に携わっている経験を生かして、皆さまに和文化の素晴らしさをお伝えする活動をしています。
エラマプロジェクトのチームに参加してからは、フィンランド研究家の石原侑美さんと一緒に、「和えらま」の講座を開いてきました。
この講座ではフィンランドと和文化の絶妙なつながりを見出しながら、豊かで幸せな生き方を探究していますが、今年の3月で、企画がスタートして4年目に突入しました。
これまで扱ってきたテーマは、次のようなものがあります。
サステイナブル
デザイン
自然
子育て
教育
働き方
サウナ・お風呂
余白の文化
音楽
スポーツ
お祭り
わびさび
このような切り口から、フィンランドと和文化を見つめてきました。
(「自然・デザイン・サウナとお風呂」について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。「サウナとお風呂」についてはこちらの記事により詳しく載せています。)
フィンランドと和文化という二か国に焦点を当てながら、いつも思うのは、ふたつの文化を掛け合わせて探究するからこそ、大切なものが浮かび上がってくるということ。
侑美さんがフィンランド、私が和文化について下調べをした上で、二人で対話を重ねながら講座の内容を練り上げていきますが、私一人ではその境地に辿り着けなかっただろうなぁということがよくあります。
例えば、両国とも裸の付き合いがあるというつながりから、サウナとお風呂の文化を扱った際、私はお風呂と禊(水で身を清めてケガレを祓うこと)を結び付けて考察しました。
日本人は文化的に、水に浄化の力があると信じてきたのです。
一方、フィンランドのサウナも生や死の入り口と捉えられていたり、浄化の場となっている側面がありました。
フィンランドにそのような価値観があると知らなければ、サウナ・お風呂と精神性の関係について、私は今ほど深掘りできなかったんじゃないかなと思います。
このように、ふたつの国の文化を比べるからこそ、分かることがたくさんあります。
比較と言うと、相手と優劣を競うようなイメージがあったり、相手と比べて自分に劣等感を抱いたりと、ネガティブな印象がありますが、他と比べるって決して悪いことではないんだなぁと、この講座を通して実感しました。
だって、フィンランドと比べることで、日本がもっと輝くのですから。
お互いの魅力を引き出しあうことが、本来の「比較」なのではないかなと思います。
また、私の印象として、日本人は「他の国は素晴らしいけれど、どうせ日本は……」というように、自国を低く見積もりがちな気がします。
フィンランドのデザインって素敵だなぁ。
フィンランドでは起業する人が多くてすごいなぁ。
そんな風に他の国のことは素直に称賛できるのに、自国の日本のこととなると「日本なんて」と、ものすごく辛口採点になってしまったりします。
でも、ちょっと待ってください。
フィンランドのデザインは、自然からインスピレーションを受けたものが多いですが、自然の動植物をモチーフにしたデザインって、日本の伝統文様にも数えきれないほどあるんです。
起業大国のフィンランドに対して、会社勤めをする人が多い日本ですが、江戸時代まで遡れば、自営業やフリーランスの働き方をしている人はとても多かったし、副業している武士も多かった。(武士の副業は生活のためという意味合いも大きいけれど)
現代の日本だけを見ると、つい世知辛い部分に目が行ってしまいますが、今のフィンランドに対して感じている素晴らしさは、案外、昔の日本にあったりするのです。
でも私たちは、自力ではなかなかそれに気づけない。
だから、他の国と比較することで、他の国を通して自国を見つめることが必要なのかもしれません。
フィンランドにはこんな素敵な文化や習慣があるんだよって教えてもらうことで、「あれ?それって日本にもあったんじゃない?」「これって素晴らしいことだったんだね」と、ようやく腑に落とすことができるのかもしれませんね。
こんな風に、フィンランドと和文化のつながりから、豊かで幸せな生き方を探究していくことで、私はますますふたつの国のことが好きになっています。
「和フィン折衷」という言葉に出会う
「よむエラマ」の記事を執筆しているエラマライターズさんたちとのミーティング中、あるライターさんから「和フィン折衷という言葉があるよ」と教えてもらいました。
和フィン折衷!?
私は初耳でした。
ネットで検索してみると、まず「フィンランドデザインの力で和ろうそくを守りたい!」という和Fin折衷プロジェクトが見つかりました。
エラマでも、フィンランドでは照明の明かりや炎によるリラックス効果を大切にしていて、温かみのある照明を用いていることは取り上げてきましたが、このプロジェクトでは、それを和ろうそくで感じてもらいたいとのこと。
フィンランドの方がキャンドルホルダー(燭台)をデザインし、日本の職人がフィンランドをイメージした和ろうそくの制作やキャンドルホルダーの制作を担うそうです。
実は以前、飛騨市(岐阜県)の和ろうそく職人の方からお話を伺い、職人の心意気や伝統の奥深さに圧倒された経験があったので、フィランドデザイン×和ろうそくのコラボは、個人的に非常に感慨深いです。(その時の様子はこちらの記事に書いています。)
ちなみに、「折衷」を辞書で調べると次のような意味が出てきます。
いくつかの異なった考え方のよいところをとり合わせて、一つにまとめ上げること。(『デジタル大辞泉』より)
両方のよいところをとってほどよく調和させること。(『日本国語大辞典』より)
私たちが続けてきたフィンランドと和文化の絶妙なつながり探究も、まさに和フィン折衷ですね!
私たちの講座では、文化や習慣など、精神的な和フィン折衷に着目することが多いですが、上述したフィンランドデザイン×和ろうそくのように、我々も、和フィン折衷の具現化をいくつか行っています。
2023年3月18日(土)、東京の古民家で講座を開催しましたが、その際に匂い袋(お香の一種)の調合ワークショップを行いました。
匂い袋は、白檀、丁子、龍脳、桂皮などの伝統香料を用いて作るのですが、この時はフィンランドのサウナアロマを取り寄せて、香料に加えました。
OSMIAというブランドのサウナアロマで、白樺とグレープフルーツの二種類を使いました。
和の香料の奥深い薫香に、森林を思わせるサウナアロマの爽やかな香りが加わり、まさに和フィン折衷の、現代的な新しい匂い袋を作ることができました。
また、2022年11月13日(日)に開催したエラマ文化祭では、エラマのイベントにもたびたびご出演くださっている舞踊家、見城星梅月さんに舞っていただきました。
星梅月さんが舞うのは、日本の伝統芸能「詩舞」。
文化祭のフィナーレには、フィンランドの楽曲で詩舞を舞っていただき、優雅でありながら凛とした舞に、フィンランドから来日していたゲストたちも涙していました。
こんなにも心震わせる、感動的な場に立ち会うことができて、私も胸がいっぱいでした。
エラマプロジェクトの生み出した和フィン折衷もとっても素敵でしょう?
着物とマリメッコで和フィン折衷
先日、エラマプロジェクトのオンライン/オフラインコミュニティである「エラマの森」の住民さんたちとのオフ会が、埼玉県のムーミンバレーパーク・メッツァビレッジで行われました。
ここは、フィンランドや北欧をテーマにした自然豊かな複合施設です。
私は着物で参加しました。
この緑あふれる土地を着物で歩いてみたいと思ったのです。
和フィン折衷を体現したいと無意識に感じていたのかもしれません。
当日は雨だったので、濡れても良いように木綿の着物をチョイスし、羽織も木綿で合わせました。
着物と言うと、汚れないよう気を付けないといけなかったり、お手入れが難しかったりするイメージがありますが、それは主に絹の着物のこと。
木綿の着物だったら家で洗濯できますし、普段着として気楽に着ることができます。
そして、バッグはフィンランドブランドのマリメッコにしました。
マリメッコの鮮やかな色遣いと大胆なデザインって、着物によくマッチするんです。
私は、自分には派手な柄の服や小物は似合わないと思っているんですが、着物だと無理なくコーディネートできてしまいます。
実際に、着物とマリメッコでメッツァビレッジを闊歩してみた感想は、
気分爽快!
心が踊る!
そんな感覚でした。
着物なのに、なぜか洋服を着ている時よりも開放感がある。
不思議な感覚でした。
どうやら私にとっては、カジュアルな着物を着てフィンランドの小物を持つということや、そういう出で立ちで自然の中にいるということが、自分の性に合っているようです。
想像以上に楽しかったので癖になりそうです。
さて、今回は和フィン折衷を取り上げました。
個人的にも和フィン折衷をもっと探究していきたいですし、エラマプロジェクトとしても、和フィン折衷を通して、皆さんが豊かで幸せになれるお手伝いをしていきたいと思っています。
皆さんはどんな和フィン折衷を自分の暮らしに取り入れたいですか?
和フィン折衷は、どんな組み合わせも自由です。
あなたなりのお気に入りの「折衷」を見つけて、この素敵な考えをぜひ一緒に育てていきましょう。
Text by 橘茉里(和えらま共同代表/和の文化を五感で楽しむ講座主宰/国語教師/香司)