先週末、4月12日(土)・13日(日)の二日間にわたり、島根県出雲市にて開催いたしました「北欧フィンランド旅と学びのマルシェ」。おかげさまで、たくさんの方々にご来場いただき、大盛況のうちに幕を閉じることができました。ご参加くださった皆様、そして素晴らしい会場をご提供くださったコワーキングハウス・マヤッカの平田萌さん、誠にありがとうございました!
今回のマルシェは、エラマプロジェクトとして初めての島根開催。フィンランドをテーマにしたコワーキングハウス「マヤッカ」さんとの共同開催という、私たちにとっても特別な機会となりました。
「和」と「フィンランド」が心地よく調和する空間

会場となったマヤッカさんは、JR出雲市駅から徒歩5分という好立地にありながら、一歩足を踏み入れると、まるでフィンランドの家庭に招かれたような温かい空気に包まれます。
木のぬくもりと北欧デザイン、そして日本の古民家が持つ落ち着きが見事に調和した「和フィン折衷」の空間。風通しも良く、窓から差し込む光も心地よくて、思わず長居してしまう…そんな居心地の良さが印象的でした。ここは単なるコワーキングスペースではなく、訪れる人の心に寄り添う「居場所」なのだと感じました。皆さんにも、ぜひ一度訪れていただきたい、心からおすすめできる場所です。
学びと対話、そして出会い。熱気に包まれた講座
二日間を通して開催した3つの公開講座。
・北欧の子育て教育入門講座(講師:石原侑美)
・フィンランド旅行体験談(講師:平田萌)
・フィンランド働き方入門講座(講師:平田萌)
これらの講座には、のべ30名を超える方々にご参加いただきました。嬉しいことに、今回初めてエラマプロジェクトのイベントにご参加くださった方がほとんど!出雲市内や島根県内からはもちろん、遠くは広島から片道3時間かけて、また山口から泊まりがけで駆けつけてくださった方もいらっしゃいました。中国地方の皆さんの、北欧への関心の高さを改めて感じることができました。
教育講座では、
「この地域では北欧のことを学びたくても学ぶ機会がなかったので、本当に嬉しいです」
「昨晩徹夜だったので、今日の講座は途中で寝てしまうかと心配でしたが、石原さんのお話が面白すぎて、寝る隙なんて全くありませんでした!」
といった、熱のこもったご感想をいただきました。
また、デンマークのフォルケホイスコーレに留学経験のある参加者の方からは、
「北欧での滞在で感じていたけれど、言葉にできなかった感情が、石原さんの講座を聞いて全て言語化されたような感覚になりました」
という、私たちにとっても非常に示唆深い、嬉しいお言葉をいただくことができました。
平田萌さんによる旅行講座には、15名を超える女性が集まり、会場は「いつかフィンランドへ!」というワクワクした空気でいっぱいに。働き方講座では、参加者の皆さんが抱える悩みや想いを率直に語り合い、予定時間を超えても対話が止まらない様子でした。
フィンランドの風を日常に

講座以外にも、フィンランドの研究家・石原侑美が現地で買い付けた雑貨や、飛騨高山から出張した「エラマ bouzuコーヒー」の北欧コーヒー、フィンランドの写真展、無料の旅行相談会など、様々な角度からフィンランドを感じていただけるコンテンツをご用意しました。
今回のマルシェが、フィンランドの文化や考え方に触れ、ご自身の働き方や生き方、日々の暮らしを見つめ直すきっかけとなっていれば、これ以上嬉しいことはありません。
ご参加いただいた皆様、そして素晴らしい機会をくださったマヤッカの平田萌さん、重ねて心より感謝申し上げます。 Kiitos paljon!
エラマの学校、次はあなたの街へ?
さて、エラマプロジェクトがお届けする「北欧体験」は、まだまだ続きます!
★4月20日(日) 兵庫・神戸
【北欧ウェルビーイング入門講座&ミニマルシェ】
築60年の酒屋をリノベーションした素敵な空間「heso.」で、北欧の暮らしやウェルビーイングについて学び、雑貨やコーヒー、手仕事に触れる一日。
★4月26日(土)・27日(日) 福岡・赤坂
【北欧の働き方&ウェルビーイング入門講座】(26日)
【フィンランドの教育入門講座(ランチ付き)】(27日)
働き方、教育、ウェルビーイング…北欧の知恵を二日間にわたってたっぷりお届けします。
各イベントの詳細は、「エラマの学校」のページでご確認いただけます。
ぜひチェックして、お近くの会場へ遊びにいらしてくださいね!
あなたの街で、お会いできる日を楽しみにしています。

「フィンランドのウェルビーイングって、どうすれば手に入れることができるの?」
そんな疑問を抱えるあなたへ、エラマプロジェクトがお届けする、春の全国ツアー開催のお知らせです!
フィンランド生涯教育研究家・石原侑美が、北欧の魅力をたっぷり詰め込んで、あなたの街へお伺いします。
全国各地で異なるテーマのイベントをご用意。この春、あなたも北欧の風を感じてみませんか?
エラマの学校 全国ツアー ラインナップ
3月15日(土) 岐阜・高山
北欧エラマカフェ@エラマ図書館
「フィンランドの図書館のような空間で、ゆったりとした時間を過ごしたい」
そんなあなたにぴったりのイベントです。
こだわりの北欧コーヒーを片手に、心静かなひとときをお過ごしください。
北欧雑貨の販売もありますので、お土産探しにもぜひ!

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3月22日(土) 富山・南砺
北欧ウェルビーイング紀行 in 富山・南砺
「自然の中でリフレッシュしたい」
「心身ともに癒されたい」
そんなあなたにおすすめなのが、桜ヶ池クアガーデンホテルで開催されるこのイベント。
地元食材を使ったランチや温泉入浴で、心と体を満たしてください。

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3月29日(土) 兵庫・丹波
北欧・バルト三国入門講座
「北欧とバルト三国の文化に興味がある」
「自分の生き方について、新しい視点を得たい」
そんなあなたにオススメ!
石原侑美と一緒に、北欧・バルト三国の文化や暮らしを学びませんか?
ドリンクと北欧のお菓子もご用意しています。

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4月12日(土)&13日(日) 島根・出雲
北欧フィンランド旅と学びのマルシェ
「フィンランドをテーマにした空間で、ゆったりと過ごしたい」
「フィンランド好きの仲間と繋がりたい」
そんなあなたにぴったりのマルシェが、コワーキングハウス・マヤッカで開催!
雑貨、コーヒー、ワークショップ、旅の相談会など、様々なコンテンツをご用意しています。

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4月20日(日) 兵庫・神戸
北欧ウェルビーイング入門講座&ミニマルシェ
「神戸・塩屋のおしゃれな空間で、北欧の暮らしに触れたい」
築60年の酒蔵をリノベした素敵な空間heso.で、ウェルビーイング入門講座とミニマルシェを開催!
手仕事ワークショップにもぜひご参加ください。

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4月26日(土)&27日(日) 福岡・赤坂
北欧の働き方&ウェルビーイング入門講座 / フィンランドの教育入門講座
「北欧の働き方や教育について、深く学びたい」
「これからの時代に必要なウェルビーイングについて考えたい」
そんなあなたにおすすめなのが、福岡で開催される2つの講座。
26日(土)は働き方、27日(日)は教育がテーマです!


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イベントの詳しい情報はこちら
各講座&イベントの詳細は、エラマの学校のページをご覧ください。
各地で様々なイベントをご用意して、皆様のお越しをお待ちしております!
こんにちは!ライターのひらふくです。
さて、エラマプロジェクトの長寿企画といえば「哲学バー」!
毎月1回だけ集まってひとつのテーマをみんなで自由に話すこのイベント。2025年2月で記念すべき60回目を迎えました。
60回目のテーマは「生産性とは何か?」。
…はい、ここで仕事のことを思い出して、なんだか気分が落ちこんだ方には今回の記事をおすすめします!
なぜなら、私も同じようにこの言葉にモヤモヤしながら哲学バーに参加したから。そしてその後は少しだけ「生産性」に前向きになれたから。
哲学バー2号店、今夜は私と語り合いませんか。
「生産性」ってなんだかこわい
生産性という言葉の意味は「投入した資源や労力に対して得られる成果の量や割合」だそうです。Productivityという英単語の和訳で、もともと日本語にはない言葉でした。
少ない労力で大きな成果が得られたら生産性が高いね!と言われます。
2月の哲学バーでは、参加者さんがいろんな角度から切りこんでいました。
「生産性は最初のゴール設定が大事だと思う」
「人間関係でも生産性ってあるの?」
「社会にとっての生産性もあれば自分にとっての生産性もある」
「実は生産性が低い時なんかないんじゃない?」
「難民支援の現場では、いくら支援しても立ち上がらない人もいるけど、じゃあその活動は生産性が低いの?」
「会社は上司受けする人が出世する。生産性が低くても要領のいい人の方が出世する」
さすがの着眼点…。どれもじっくり考えてみたくなります。
ですが、その時の私が思っていたのは実はすごく単純なことで。
「生産性ってなんだかこわい言葉だな」でした。
必要なのはわかるけれど、プレッシャーをかけてくるようで緊張感があって、ともすれば壁のように立ちはだかるもの。絶対的な良し悪しの指標として私たちを測るもの。
社会も企業も「生産性を上げよう!」と叫ぶけれど、本当はみんなその言葉は好きじゃないんじゃないかとさえ思いました。
ネジ1本の価値
哲学バーの楽しい点は、いろんな立場・いろんな年齢の方が集まるところです。だからこそ自分にない発想にハッとさせられます。
この日の私に飛びこんできたのは、参加者さんのこの言葉でした。
「自分は上司としては向いてなかった。コツコツ現場でやるのが好きだったんです。だから評価はされませんでした」
その会社では、上司になること=生産性が高い=評価されるという図式でした。
でも、本当にそうなのでしょうか。生産性ってそういうことなのでしょうか。
私は今まで人事という仕事をしてきました。いろんな部署にお邪魔していると、どの仕事も、なければ会社が回らないことがわかります。
例えば、現場でネジ1本を大切に作る人がいるから、機械は安全に動くし、遠くまで人や物を運べるし、今日も誰かのもとに生きるために必要なものが届くのです。
だから、管理職の人よりも、現場の職人さんが尊敬されている会社だってあります。
「生産性」という言葉は絶対の指標に思えるけれど、実は「何をもって生産性が高いとするか」は会社や場所によって違うのです。
生産性って、私たちが思っているより、ずっとあいまいなものかもしれない。
するとなんだか緊張がほぐれてきました。
「生産性」で測りきれない私たち
場所によって生産性を測る指標はちがう。
じゃあ、私たちはどこを目指したらいいのでしょう?
ひとつは、あなたを喜んでくれる場所にいることです。
例えば、細かい数字が苦にならないならお金や品質をチェックする仕事につく。一方、何時間もゲームを続けられる人は、ゲーム会社でならいろんな活躍ができるかもしれません。
あなたがやってて楽しいこと、興味があること、苦にならないこと、自然とできること。
あなたにとっては当たり前でも、その力を高く評価し必要とする場所があります。
その場所にいられれば、あなたは「生産性の高い人」「いてくれて嬉しい人」であり、そしてあなたにとっても楽しい場所になりそうです。
そしてもうひとつ。
誰かに対して「生産性が低いな」と思ったとしても、その誰かも私の知らない何かを生み出している。それを忘れないでいたいのです。
会社にいると、その会社の目標に向かうために一定の指標で測られます。それはある意味では必要なことだと思います。
でも本音では、私は自分と誰かを比べて、高い・低いと評価したくもされたくもありません。
私が「生産性」という言葉をこわいと思ってしまったのは、その言葉の裏には誰かと比べられているんだという暗黙の了解があって、それが嫌だったのです。
本当は比べて評価する必要はないのでしょう。
私たちは誰もが何かを生み出していて、それはひとつの場所のひとつの指標だけで高い低いと測り切れるようなシンプルなものではない気がします。
場所が変われば指標も評価も変わる。
生産性ってそんなあいまいなもの。
振り回されずに、もう少し気軽に、この言葉と付き合ってみたいと思いました。
さあ、あなたにとって「生産性」はどんな存在でしょうか?
【告知】哲学バーは毎月開催しているオンラインの対話イベントです
次回の開催は3/12(月)20:00〜22:00。テーマは「もっと!寛容さとは何か?」。1月に大好評だった「寛容さとは何か?」の第2弾です。
哲学バーの開店日はこちらからチェックしてくださいね。
はじめての参加でも、顔出ししない聞き専でもOKです!
哲学バーの何が楽しいかって、問いは突き詰めても答えは出さないところ。
新たな問いを持ち帰ってもいいし解決しなくても自由です。
そこにあるのは、立ち止まって考えられる時間と仲間。
そんな夜をご用意してお待ちしています。
Text by ひらふく(フィンランド的働きかた実践家)
先日、オンラインにて開催された「フィンランドの働き方入門講座」。講師にフィンランド的働き方実践家の平田萌さんをお迎えし、幸福大国フィンランドの働き方から、私たち自身の働き方、そして生き方を見つめ直す、貴重な時間となりました。

フィンランドの働き方のエッセンスとは?
世界幸福度ランキングで常に上位を占めるフィンランド。その背景には、単なる効率性だけでなく、個人のウェルビーイングを尊重する社会システム、独自の働き方、学びの文化があります。
講座では、フィンランドの基礎知識から、平田さんが現地で体験したリアルな働き方、そして参加者との活発な質疑応答を通して、フィンランド的働き方のエッセンスを深く掘り下げていきました。
私たちが忘れかけていたもの
フィンランドの働き方から見えてきたのは、
・個人の尊重: 誰もが「個」として尊重され、自分らしく生きられる社会
・時間の使い方: 仕事と休息のメリハリをつけ、自分の時間を持つことの大切さ
・学び続ける姿勢: 変化を恐れず、常に新しい知識やスキルを習得することへの意欲
など、現代社会で私たちが忘れかけている、大切な価値観でした。
参加者との対話から生まれた、新たな気づき
講座の後半では、参加者の皆さんからの質問に平田さんが丁寧に回答。
「日本の企業文化でフィンランド的な働き方を実現するにはどうすれば良いか?」
「ウェルビーイングな働き方とは、具体的にどんなものなのか?」
など、具体的な質問を通して、参加者それぞれの働き方に対する課題や疑問が浮き彫りになりました。
平田さんは、自身の経験を踏まえながら、
・自分にとっての「心地よい働き方」を見つけること
・周りの人に流されず、自分のペースで進むこと
・小さなことからでも良いので、まずは行動してみること
の大切さを伝えました。
これからの時代に必要な働き方とは
今回の講座を通して、参加者の皆さんと共有したのは、
「これからは、量よりも質を重視する働き方が必要になる」
ということ。
長時間労働や成果主義に偏るのではなく、
自分の心と身体を大切にし、
本当に価値のあることに時間を使うこと。
それこそが、これからの時代に必要な働き方なのではないかと感じました。
自分らしい豊かさを求めて
講座の最後に、平田さんは、
「フィンランドの働き方は、あくまで羅針盤。
自分の価値観やライフスタイルに合わせて、
自由に航路を選んでいくことが大切です。」
と語りました。
今回の講座が、参加者の皆さんが自分らしい働き方を見つけ、
より心豊かな人生を歩むための一助となれば幸いです。
エラマの学校からのお知らせ
エラマプロジェクトでは、
「自分の豊かで幸せな生き方を描く」をテーマに、
様々なプログラムやコミュニティを提供しています。
今回の講座にご参加いただいた平田萌さんも参加する
「フィンランドで働き方とウェルビーイングを学ぶプログラム」を5月に開催いたします。
「説明会実施中」5月のフィンランドの働き方を学校で学ぶプログラム

その他、教育やデザインなど、テーマ別のツアーも企画中です。
詳しくは、エラマプロジェクトのWebページをご覧ください。
エラマの学校Webページ
皆様のご参加を心よりお待ちしております。
こんにちは。ひらふくです。
2024年もあと少しになりましたね。みなさんは今年どんな思い出ができたでしょうか?嬉しくなる記憶や思い出したくもない苦い記憶。いろいろあったかもしれません。
私の思い出の一つは10月に参加したエラマプロジェクトのツアーです。ツアータイトルは「”北欧のシリコンバレー” フィンランド・オウルで働き方とウェルビーイングを学ぶプログラム」。
これまで人事として社員の働き方に向き合ってきた私にとっては永遠のテーマです。また、今年からフリーランスになったこともあり、「幸せな働き方」は四六時中考えていることでした。
世界幸福度ランキングで1位をとり続けるフィンランド。そのワークスタイルはきっとヒントになると期待して、半年前からワクワクしていたのです。
ですが、まさかこのツアーで苦さも嬉しさも両方味わうことになるなんて思ってもいませんでした。
原因はフィンランド滞在中も私が日本での働き方をしていたこと。そうしたら一体何が起きたのでしょうか?フィンランドで七転八倒しながら得た「働き方」への気づきをご紹介します。
朝5時から夜23時まで働く
このツアーがおこなわれたのは10月13日〜19日までの7日間です。特に14日から18日までの5日間には、3人のフィンランド講師のかたからワークショップを受けることができました。
合間には自由時間もあって、オウルの街中を散策したりリサイクルショップに掘り出し物を探しに行ったり。イチョウが金色に染まる海沿いの公園で、落ち葉を踏みしめながら夕日を見たりもしました。
最終日には、河上の貸切ボートサウナで空気の冷たさとサウナの熱さに心身ともにリラックス。どこをとってもオリジナルなツアーだなとしみじみ思います。
さて、ここでツアーの楽しさだけをお伝えできればよかったのですが。その裏で起こっていたことをお話しさせてください。
私は現在フリーランスの人事としてフルリモートで働いています。いわゆるPCひとつでどこでも仕事ができる環境です。
こう聞くと自由そうですが、まだフリーとしての生活リズムを作れていない私は、ツアー中だけ休日にするなんて芸当ができませんでした。そのためツアー中も仕事を持ちこんで、日本の企業さんとの打ち合わせなどもしていました。
ですが日本とフィンランドの時差は6時間もあります。日本の朝11時がフィンランドの朝5時なのです。まして昼間はプログラムに参加しているので仕事ができません。結果、ツアーがはじまってみれば私の1日はこんなふうになりました。
4:30 起床
5:00 日本企業さんと打ち合わせ・そのままPC仕事
9:30 ツアープログラム開始
昼間 スマホで仕事の連絡を確認
16:30 ツアープログラム終了
18:00 PC仕事
23:00 就寝
なんて散々な生活リズム。他のツアー参加メンバーからは「社畜してるじゃん」と苦笑されました。
私はフィンランドで何をしているんだろう
一方で、フィンランドの人々は16時には仕事を終えて帰宅します。日本では「早く終わったらさらに他の仕事もするべきだ」という声も聞きますが、フィンランドでは帰宅して家庭や自分の時間にあてるのです。
仕事は人生の一部ではあるけれど全てではない。そう考えて人生全体を味わおうとしているスタンスに憧れます。
このスタンスは、ツアーで最初に講師をしてくださったニコさんも体現されていました。ニコさんは職業専門学校OSAOの元・校長先生です。
「生徒が人生に必要な力をつけられるよう手助けするのが先生です」。そう語りながら、フィンランドの人々にとっての幸せや人生観を紹介してくださいました。企業研修などを手がける人事としては、特に「学び」への考え方に感じ入りました(長くなるため今回は割愛しますがいつかご紹介したいです)。
ただ、ニコさんの語る「幸せ」に共感すればするほど、朝5時から夜23時まで仕事をしている”社畜”な自分が情けなくなりました。
半年前から楽しみにしていたのに、お金も時間もがんばって調整してここまで来たのに。現実の自分は「幸せな働き方」からかけ離れていることが浮き彫りになるばかりで。
ツアー中は相部屋だったので、ルームメイトを起こさないよう朝はホテルのロビーで仕事をしていました。7時ごろになると私の横をモーニングビュッフェを食べにいく人々が通りすぎていきます。
その豊かで和やかな雰囲気と、PCに向かっている自分の差を痛感して。私はフィンランドまで来て何をしているんだろうと思いました。
朝5時のロビーにはフロントの人と私しかいません。
あなたが元気で幸せだからこそ
転機が訪れたのはプログラム3日目。ライターのモニカ・ルーッコネンさんのワークショップでした。
モニカさんは日本でも翻訳出版されている『マイタイム』の著者です。日本に住んでおられた経験や、フィンランドの大企業ノキアでの会社員経験もあります。日本とフィンランドの働き方の違いやその背景まで話してくださいました。
モニカさんが提唱する”マイタイム”とは自分のための時間をとること。肩書を外して、自分を満たしてケアしてあげる時間を持つことです。エラマプロジェクトでもマイタイムの大切さは語られていて、その重要性はわかっているつもりでした。
でも、そんな私にモニカさんは言ったのです。
「日本人は周りに奉仕する優しい人たち。でも、まずは自分をケアしてあげましょう。
あなたが幸せだからこそ見ている人も幸せになれる」
いろいろな考えが頭をかけめぐりました。
私は自身をケアできているだろうか、日本人は自分より周りを優先しすぎていないだろうか…などです。
ただ、そのとき最後に心に浮かんだのは、朝のロビーでPCに向かう私を心配してくれていたツアーメンバーのことでした。
本当の”思いやり”って?
日本人の働き方のひとつに周りへの”思いやり”があると感じます。お客様や仲間など誰かのためにがんばったり、「自分は良くても他の人が困るから」と残業して手を尽くしてくれる人もいます。残業はよくないと眉をしかめながらも、私は思いやりを日本人の美徳だと思っていました。今も美徳だと思います。
でも、モニカさんの言葉でハッとしました。自分で精一杯な今の私は本当に相手を”思いやって”いるのだろうかと。
朝5時から仕事をしているときは、約7000km離れた日本の仕事相手のことを考えていました。私の都合で迷惑をかけたくないと”思いやって”、できるだけ相手のスケジュールに合わせていたのです。
そうやって眠たい目をこすりながらPCに向かう私に、ツアーメンバーは「大丈夫?」と声をかけてくれていました。「大丈夫!」と軽く返していましたが、今思えばその優しさの意味をちゃんと考えて受けとれていなかったのです。
このツアーは、他のメンバーにとっても日常を離れて味わったり楽しんだりする大切な時間です。なのに横で辛そうに仕事をする人がいたら気になりますよね。モニカさんの言葉でそこに思い至って申し訳なくなりました。そして、それを責めるのでなく気遣ってくれるメンバーの有難さにもようやく気づきました。
7000km先にいる人も大事です。でも、まず目の前にいる人を笑顔にできているのでしょうか。そして相手を笑顔にするのは自分が笑顔でいることなのではないでしょうか。
実は、ツアーに来る前は「自分をケアする」ことに少し後ろめたさもありました。周りより自分を優先していいのかな、それは利己的じゃないかなと思っていました。
でも、無理をしながら他人を”思いやる”姿は、実は身近な人たちを心配させているのかもしれません。それは誰も幸せではないのです。
モニカさんのワークショップを受けた日の夜から私は仕事をセーブしました。全ての仕事を拾うことはやめて、必要なものや続けたいものだけに。
できた時間で夜はみんなとバーに行って、真面目な話やお酒の感想や、翌日には忘れてしまうような笑い話をしました。外は気温5度と寒いのに、ワイワイしながらスーパーでアイスクリームを買って帰りました。
最終日の貸切サウナではみんな思い思いにすごしていました。川に飛びこむ人やサウナにこもる人、テーブルで話しこむ人、屋外のお風呂で空を見上げる人。その様子を見ながら、二度とないこのメンバーとの景色をずっと覚えていたいと思いました。
よく食べて、よく話して、よく笑いました。私が笑って相手も笑ってくれる時間でした。ツアーが終わった今も、ふと思い返してはあのとき仕事をセーブしてよかったと思います。
私が私を優先することで誰かに迷惑をかけたかもしれません。でも、自分が元気でいることで、また誰かを元気にもできるのではないでしょうか。
肌になじむ働き方をあなたと
今回のツアーでは、フィンランドの人々の働き方とウェルビーイングにふれました。知識だけではなく、現地の人々と直接接して感じたことや、ツアーメンバーと一緒だからこそ気づけたことがありました。
社畜をしないと気づけなかったのは情けないのですが、日本での働き方をフィンランドでやってみたからこそ理想と現実のギャップに気づけました。ギャップを埋めるために試行錯誤して実践することもできました。
国の制度や今までつちかってきた価値観が違うので、フィンランドのワークスタイルをそのまま日本に持ってくることはできません。ですが、やっぱりおたがい似ている部分もあって、フィンランドの人の「幸せ」は私の肌になじみます。
だから、私はこれからもフィンランドをヒントに、「幸せな働き方」をいろいろ実践してみようと思います。そのひとつとして、実は地元の島根県でフィンランドをテーマとしたコワーキングスペースをはじめることにしました。
先代のオーナーさんから継いで二代目としてやっていきます。名前は「コワーキングハウス・マヤッカ」。マヤッカとはフィンランド語で灯台のこと。人生の岐路で迷った時に立ち寄れる灯台のような場所になりたいです。
日本家屋と北欧テイストをミックスしたコワーキングスペースです。
幸せにいろいろな形があるように働き方もいろいろあっていいはず。日本のやり方、欧米のやり方、そしてフィンランドのやり方。人と違っていたとしても、自分がより心地よくいられる方法を探して実践してみてお伝えしていこうと思います。
そしてあなたが日々感じたこともたくさん聞かせてくれませんか。あなたのお話や元気で笑っている姿が私を笑顔にしてくれます。
人を思いやれるあなただからこそ、まずは自分からケアしてあげましょう。
あなたが今日も元気でいてくれることを願っています。
text by ひらふく(フィンランド的働きかた実践家)
2024年10月13日(日)~19日(土)、エラマプロジェクトでは「北欧のシリコンバレー」フィンランド・オウルにて、「フィンランド・オウルで働き方とウェルビーイングを学ぶプログラム」を実施しました。本レポートでは、参加者である平田萌さん(人事のプロ、キャリアコンサルタント)の体験に基づいた、フィンランドの働き方とウェルビーイングに関する考察をお届けします。
ツアー概要
日時: 2024年10月13日(日)~10月19日(土)
場所: フィンランド・オウル(現地集合・現地解散)
特徴: 職業専門学校または大学の視察、現地のライフスタイル専門家との懇談、森林プログラム体験、ボートサウナ体験
人事のプロが見たフィンランド:参加前の期待と現実
平田さんは、2024年春からフリーランスの人事として独立したばかり。 フィンランドの「幸せな働き方」を学び、自身の独立後の人生に活かしたいという強い思いで本ツアーに参加しました。 参加前は、フィンランドの高い1人あたりのGDPと短い労働時間から、日本のビジネスパーソンにはない高度な「仕事術」や「チームワーク」の存在を期待していました。しかし、ツアーを通して得た結論は「予想外の気づき」でした。
ツアーを通しての3つの気づき
ツアーを通して平田さんが得た3つの大きな気づきは、
1. 「かっこいい人」の定義の違い
フィンランドの職業専門学校で講演を行った元校長・ニコさんとの出会いを通して、平田さんは「かっこいい人」の定義が日本とフィンランドで大きく異なることを学びました。日本では仕事を頑張る人がかっこいいと見られ、「長く働き業務量をこなす」「生産性が高い」「成果を出す」ことが会社で評価される傾向がありますが、ニコさんは「人生に余裕のある人」こそが魅力的だと語ったのです。この考え方は、平田さんにとって衝撃的なものでした。

2. 自然と共にある休憩時間
ニコさんの講義中には、自然の中で休憩を取る時間がありました。参加者たちは、森を散歩し、気に入った葉っぱを持ち帰るなど、仕事とは全く異なることに意識を集中させました。この経験を通して、平田さんは「自然の中で過ごすだけでなく、意識して仕事を忘れることで切り替えてリフレッシュできる」ことを実感。そして、日本でも短い休憩時間(5~10分)をこまめにとることで、仕事への集中力や生産性を高められる可能性に気づきました。

3. まずは「自分」をケアする
ツアー最終日のモニカさん(フィンランド在住の日本人ライター)とのワークショップで、「日本人は周りに優しく、自分自身を後回しにする傾向がある」という指摘を受けました。モニカさんは「まずは自分をケアすること。自分が元気だからこそ、新しいことへの意欲が湧いてきたり周りの人に寛容になれる」と語りました。平田さんは、この言葉が、日本の働き方改革や人間関係の改善、そして自身の幸せな生き方につながるヒントだと感じました。

ツアー後の変化と今後の展望
ツアー後、平田さんは、フィンランド流の働き方を日本にそのまま導入することは難しいと考えながらも、いくつかの実践可能な方法を考案しました。
そして、この経験と気づきを基に、島根県でフィンランドをテーマにしたコワーキングスペース「majakka(マヤッカ)」(フィンランド語で「灯台」の意)を始めることことを決意。(正式には前任者から引き継いで、2024年冬から新体制としてスタート)迷える人たちの「灯台」となるような場所を目指し、活動していくとのことです。
編集後記
平田さんのレポートは、フィンランドの「幸せな働き方」を具体的なエピソードとともに紹介するだけでなく、日本社会における働き方や生き方への深い洞察を示唆するものでした。 ツアー参加者の方々からも温かいコメントが寄せられ、本プログラムの意義が改めて確認できました。 来年の5月には第2弾ツアーの開催も決定しています。 より多くの皆様に、フィンランドの「幸せ」を体感していただきたいと考えています。
こんにちは。ライターのひらふくです。暑い日々がつづきますが立秋もすぎて暦の上ではもう秋ですね。
秋になるとなんだかもの寂しい気持ちになります。ひとりでいると理由もなく心にすきま風が吹いているような気分になったり。
私はひとりでいることは苦ではありません。一人旅にも行くし自分だけでカフェに行くのも楽しいです。逆に飲み会などは最大4人までにしたいと思うくらいです。
でも、ひとりが好きだけどひとりは寂しいときがありませんか。
自分で選んだはずなのに誰かにここにいてほしいと思ったり、なのに人間関係の大変さに出くわすとやっぱりひとりが楽だと思い直したり。心は揺れ動いていて自分でも自分がわからなくなってしまいます。
そこで、今回はあらためて”ひとり”が持つ意味や、自分にとって生きやすいバランスを考えてみました。ひとりでいたいけれどひとりが寂しい。そんな時にかたわらに置いてもらえたら嬉しいです。
“ひとり”ってなんでしょう?
私が”ひとり”について考えたのはエラマプロジェクト主催の侑美さんの言葉からでした。侑美さんは2024年は8月から10月までフィンランドに滞在しています。そこで豊かな自然にひとり囲まれている中で孤独感について考えることがあったそうです。
物理的な距離は離れていても、心はいつも近くに感じられる。そんな温かい関係に支えられているからこそ、こうして一人で静かに過ごしていても、深い孤独感を感じずにいられるのだと思います。
そして、この3日間で改めて気づいたのは、「周りの人との心地よい人間関係があってこそ、ひとりの時間も充実する」ということ。
周りの人との関係に悩み、疲れてしまうと、ひとりの時間も孤独で寂しいものになってしまいますよね。
どんな人と一緒にいたいのか、どんな距離感で付き合いたいのか。
心地よい人間関係を築くために、常に模索し続けることが大切なのだと感じています。
ひとりの時にも周りの人との心地よい人間関係に支えられている。それは私の心にすとんと落ちてきました。物理的にはひとりでも、それを寂しいと思うかどうかは自分の心が決めること。心が寄り添っていると思えるのなら寂しくないのです。
例えば本を読んでいたら響く言葉に出会って「今度あの人に話そう」と顔が浮かぶ時。悲しいことがあっても来週あの人に会うまではがんばろうとふんばる時。ひとりでいるけれどきっと心は孤独ではないのでしょう。
反対に、大勢でいるけれどひとりぼっちだと感じる時もあります。私の場合は、大人数の飲み会にがんばって行ったけれどノリきれなくて声だけで笑っている時。自分でも顔がこわばっているのがわかります。
それは心と反対の行動をしているからかもしれません。本来は楽しかったら笑うし違うと思ったら笑わなくていいはずです。できないのは相手を気遣って私の心を押しこめているから。自分の心を出さないでいると、物理的には近くても、おたがいの心は遠くて自分だけ置いてきぼりにされたようです。
どうやら”ひとり”には二つの意味があるようです。その空間にひとりでいることと、心が誰ともつながっていないと感じていること。
私は心を押しこめるくらいなら空間にひとりでいたいと思います。でも心は誰かと寄り添っていたい。この二つは実は矛盾しなくてどちらも叶えられそうで少し嬉しくなってきました。
スナフキンのカッコよさは彼以外が作ってる
空間にひとりだけど心はひとりじゃない。これってどんなバランスなんでしょう?
ふと浮かんだのはフィンランドが生んだ名作ムーミンに出てくるスナフキンです。
日本のアニメのスナフキンは物知りでクールな孤独を愛する一匹狼。いつもムーミンやスニフをフォローしてシニカルな笑みを浮かべていてカッコいいと評判です。自分を偽らない彼の言葉は心に突き刺さってきます。
「いつもやさしく愛想よくなんてやってられないよ。理由はかんたん。時間がないんだ」
「大切なのは、自分のしたいことを自分で知ってるってことだよ」
私は幼いころはスナフキンがお気に入りで、あんなふうに自由でいたいと願っていました。でも、スナフキンのあるセリフに出会って今は少し変わってきています。
「ぼく、ムーミンたちのことだって、わずらわしく思うこともある。おしゃべりもしたがるし、どこへ行っても、だれかしらいるし。だけど、ムーミン一家とくらしていると、いっしょでも、ひとりでいられるんだ。(中略)ムーミンたちは、ぼくのこと、ひとりにしておいてくれたんだ…」
「ムーミン谷の十一月」より
いっしょにいるけどひとりにしてくれる。それはひとりでいるけどいっしょにいてくれることと似ている気がして。
そう思うと、スナフキンが毎年冬にムーミン谷を去って一人旅に出るのは、ムーミンたちがいてくれるからじゃないかと感じます。春に待っていてくれる人たちがいるから、彼はひとりでも孤独じゃないのです。彼のクールなカッコよさはムーミンたちのおかげだとしたら少しスナフキンに親近感がわいてきました。
私は会いたい人たちを思い浮かべる時にこのセリフを思い出します。
例えば同じ空間で無言でいても苦じゃない人たち。言葉がまとまってなくても最後まで聞いて「うん」とうなづいてくれる人たち。いっしょに旅行に行った先で「ちょっとひとりで歩いてくるね」と言ったら「いってらっしゃい」と気持ちよく送り出してくれる人たち。
私の心を尊重して、でも孤独にはしないで寄り添ってくれるのです。こんな人たちとずっといっしょにいたいなと願っています。
ひとりだけど心はひとりじゃない。それはスナフキンのバランスかもしれませんね。
寂しさも心地よさに変えて
最近”solitude(ソリチュード)”という英語を知りました。
意味は”孤独”なのですが、ひとりでいることにポジティブなニュアンスがあります。他の人と離れてすごすことで自由を感じたり思考や感情をふりかえって内省できたりするからとのこと。
フィンランドの人たちが休みの日に森で過ごすのもこれに近い気がします。
また、ソリチュードは寂しさも歓迎するそうです。寂しくないほうがいいと思っていたのでちょっと不思議です。寂しさを歓迎する理由も考えてみましょう。
寂しい時は心が冷えて辛くなります。そして誰かに会いたくなって会いたい人たちのことを思い浮かべます。
すると彼らとつながっている気がしてふわっと心があったかくなって。寒いからこそ焚き火が温かく感じられるように、寂しいからこそ心のつながりを実感できるのかもしれません。
寂しさは寄り添うために必要なことだとしたらそんなに悪いものでもなさそうです。ソリチュードの直訳は”孤独”ですが私は”心地いい孤独”と訳したいなと思いました。
日常では、忙しさや悲しさに紛れてすぐにひとりぼっちかのように落ちこんでしまいます。
でも大事なのは寄り添いたい人たちのことを忘れないこと。寂しさをきっかけに大事な人たちに思いをはせて心はそばにいたいと思います。(もちろん呼ばれたら物理的にもそばに飛んでいきますよ!)
ひとりが好きだけどひとりは寂しいあなたへ。
この記事を書いている今、私はあなたに思いをはせています。そして私と同じようにあなたのことを思い浮かべている人が今もきっといます。
だからあなたも誰かのことを思い出して寄り添ってみませんか。そうしたらひとりが好きな私たちは孤独な時でさえも心地よく過ごせるはず。
毎日いろいろなことがあるけれど寂しさも心地よさに変えて。ひとりだけれどいっしょに生きていきましょう。
Text by ひらふく
こんにちは、ひらふくです。
春は始まりや終わりの時期ですね。私の周りもいろいろ変化が起きました。みなさんも新たに変わったことがあるかもしれません。
変化といえば、最近エラマプロジェクトのホームページにも新しいことがあったようです。以前は、「フィンランド」や「北欧」で検索して見つけてくださる方が多かったのですが、最近は「自分なりの幸せ」というワードでヒットしているとのこと。
「自分なりの幸せ」。確かに私にとっても大事なキーワードです。
ただ、実は最近自分なりの幸せを探すことに少し疲れてしまいました。だってなかなか見つからないし続かないから。非日常なイベントに参加して、気持ちが盛り上がり「見つけた!」と思っても日常に帰ると忘れてしまったりします。
このループから抜け出すため、今回は幸せ”探し”ではなく幸せ”がる”日をやってみました。「幸せがる」は「おもしろがる」から思いついた私の造語です。「これはおもしろい」と興味をもつのと同じで「これは幸せだ」と勝手になんでも幸せに変換してみました。
あるもの全てが幸せに変わるのだから幸せに満ちあふれるはず!…だったのですが事態は思いもよらない方向に。
では、幸せがってみた1日にお付き合いください。
基本の「幸せがりかた」をやってみる
まずは本などでよく見かける方法を試してみました。
・ささいなことが幸せ
・嫌なことも実は幸せ
・人のつながりで幸せ
さっそくやってみます。
■ささいなことが幸せ
朝起きて顔を洗ったとき「冷たい水がすぐ出てきて幸せだな」
歯を磨きながら「清潔な暮らしができて幸せだな」
お茶を淹れて「朝からゆっくりできて幸せだな」
…う~ん、なんだか無理やりな感じ。今日は幸せに思えても明日からもずっと思えるでしょうか。
どれもありがたいことには間違いないのですが、私はワガママなので毎日慣れてしまっていることは幸せ変換しにくそうです。
■嫌なことも実は幸せ
人ごみが苦手なのですがあえて出勤時の満員電車にチャレンジ。もし誰かがお年寄りに席を譲るシーンなどを見れたら心温まること間違いなしです。
しかし、あまりの窮屈さに手すりを掴むのに必死でした。視線が合うと気まずいので周りも見れず耐えるばかり。私にとっては幸せに変換できないものもあるようです。
■人のつながりで幸せ
現代においてつながるツールと言えばSNS!ということでXやインスタをながめてみました。フォローしている方のインスタを見ていると広告で気になるものを発見。そこで紹介されていた商品のさらに先へ…と気づけば2時間がたちました。
でもどうにも幸せな気分にはならず、むしろ「あれ欲しいな」「私もやるべきなのかな」と物欲や不安を煽られているような。「こんなふうになれますよ」という幸せのお手本をたくさん見たはずなのに、私は幸せになっていなかったのでした。
「幸せのお手本」に当てはまろうとして
なんでも幸せがってみたのになぜか空振りです。
ささやかな幸せには慣れるし、満員電車はやっぱり好きになれないし、SNSにある幸せのお手本たちはプレッシャーをかけてきます。
これはなぜなんでしょう。
考えてみると、私はなんでも幸せがると言いながら実はその逆で、世間が示す「あるべき幸せ」にがんばって当てはまろうとしていた気がします。
ささやかなことに感謝できる自分、嫌なこともポジティブに考えられる自分、キラキラ生活で年収●万円の自分…。そんなあるべき像になって、あるべき幸せに当てはまりたかったんです。だって、私には「世の中と違っても自分にはこれが幸せだ」と言い切れるような自信がないから。お手本の真似をして「私は幸せなんだ」と周りや自分に言い聞かせたかったのです。
でも、実際に幸せがってみてわかったのは、私はそれらを幸せだと思えないということでした。
私はどうして自分の幸せを断言する自信がないのでしょうか。
それは、「幸せ」という言葉が今や一人歩きしているせいかもしれません。
本やSNSで切り抜かれる幸せはわかりやすくて誰からも認められるものです。私はいつしか幸せとはそんなスペシャルなものだと思うようになりました。
幸せになるには努力が必要で簡単には手に入らないもの、だから自分はまだ幸せじゃないし、探し続けてやっといつか手に入る特別な瞬間だと信じていました。
でも本当に幸せはそんなにスペシャルなのでしょうか。
幸せがる1日の中で、楽しみにしていた展覧会を見に行きました。展覧会は予想通りのいいものでしたが、あとで思い返して幸せを感じたのは別の瞬間でした。
それは最寄り駅におりて潮の匂いを感じたとき。知らなかったのですが会場は海の近くだったんです。久しぶりに海に出会えてうれしくなりました。
この小さなうれしさが、自然と微笑んでしまったときが、楽しいと思えた一瞬が「私の幸せ」でした。きっと人にはわかってもらえないし、スペシャルなものではないけれど、私はこれを「自分の幸せ」だと認めてあげたい。それではいけないのでしょうか。
「自分の幸せは自分でつくる」という言葉があります。それは努力し続けるアグレッシブな人にしかできない大仕事だと思っていました。
でも、潮を感じた一瞬を「幸せ」だと思えることも、幸せをつくってはいないでしょうか。
幸せをつくるとは、大きな物事を成しとげるのではなく、自分が感じた幸せをちゃんと認めてあげることだと今は思うのです。
それでも悩むならあなたはもう知っている
ここまで読んで、「それでも幸せを探してしまう」と思ったかたはおられますか?
実は私がそうです。
日々の一瞬を「自分の幸せだ」と認めてあげることはできそうです。だけど、そんなふうに毎日を満たすのとは別に、私の人生全体は幸せな方に向かえているのだろうか。そう思って結局幸せ探しは終わらずグルグル探しつづけている時期がありました。
でも、探し続けるあなたはもう気づいていませんか。
自分がもう日々の一瞬の幸せだけでは満足しきれないということに。今と違う方向に向かいたくなっていることに。お手本と違っても「これが自分の幸せの方向だ」と認めてあげる岐路にきているということに。
私は認めてあげるのに3年かかりました。実はこの春に10年以上続けた会社員をやめて個人事業主になったんです。
それまでは悩んでばかりでした。方向性がまだ漠然としていたり、大人だからこそ守るべきものもあります。だからこそ、新しい方向に向かうことも、向かいたいのだと認めることも怖かったのです。今だって世間的には「幸せ」だし、別に毎日が満たされてたらいいじゃないと言い聞かせていました。
なのに、苦労しながらでも切り拓いていく人たちがまぶしくて。
そんな世間的な「幸せ」でがっちり覆われていた私を溶かしてくれたのはエラマプロジェクトでした。特にここに集う人たちです。
エラマに来る人たちは誰も持論をかざしません。なぜなら自分自身も迷い悩んでモヤモヤしているから。誰かに答えを教えてほしいわけではありません。そのモヤモヤを誰かに言えて、おたがいに励まされて許されて、自分で自分の道をまた歩き出したいのだと思います。
エラマはツアーやワークショップをしていて、大きなプログラムの終わりには参加した大人たちが涙を流します。そんなとき、私はいつも場にこんな声が流れているように感じるのです。
「向かっていいんだよ、あなたが幸せだと思う方に進んでいいんだよ」
その言葉が、私を覆っていたスペシャルにギラギラな幸せを溶かして、内にあったまだ頼りなくも柔らかい光を育ててくれました。
エラマには幸せのお手本がありません。エッセンスは紹介するけれど、5人もいる講師は個性豊かにバラバラで「これが絶対の正解!」という方法を教えるわけでもありません。
だからこそ、あなた自身もまだ認められないような「あなたなりの幸せ」も「幸せ」として大事にしてくれるのだと思います。
もしエラマで出会えたら、私もあなたの幸せを大切にしたいし、私もまたあなたが認めてくれたことで励まされるのでしょう。
悩みながら歩くまぶしいあなたへ
幸せがる1日をやってみて、世の中がお手本とする「幸せ」がどれだけ自分に染みついているかがわかりました。誰かのためのお手本は私を幸せにはしてくれないことも。
私はまだまだ覆われて固まってばかり。でも、スペシャルな宝石のような幸せを待ちわびるより、手の中にある原石を磨く日々を気に入っています。
ずっと幸せを探し続けるあなたは、新しい方向に向かう気持ちを認めてあげるときなのかもしれません。それは怖さとの闘いですぐに決断はできないし時間もかかるでしょう。
でも、きっと不毛に「自分なりの幸せ」を探しまわらなくてよくなります。だってもう幸せはあなたの内にあって、認めてもらうのを待っているだけだから。
他人のお手本に幸せを探すのはやめましょう。
自分の幸せに気づいてるなら認めて陽の目を見せてあげましょう。
悩むのはあなたが人生に真摯だから。
いつの日か歩きはじめるあなたがとてもまぶしいです。
text by ひらふく