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【よむエラマアーカイブ】月の光は愛のメッセージ。十五夜だけじゃない、月見の文化

※本記事は、2021年9月15日にWebメディア「よむエラマ」に掲載された記事を、アーカイブ記事として本日掲載しています。

月が綺麗なのは、あなたがいるから

こんにちは、エラマプロジェクトの和文化担当、橘茉里です。

「月が綺麗ですね」

あなたは誰かから、そう言われたことがありますか?
実はこれ、愛の言葉なんです。

『坊っちゃん』『吾輩は猫である』などを執筆した文豪・夏目漱石は、「愛している」を「月が綺麗ですね」という言葉で表現したというのです。

当時、英語教師をしていた漱石は、学生たちに「I Love You」を日本語訳させました。しかし学生から出てきたのは「我、君を愛す」などの訳。

うーん。告白の言葉として、なんとも色気がないですね。

漱石は、日本人はそんな表現で愛を伝えたりしないと諭し、「『月が綺麗ですね』とでも訳しておけばよい」と言ったのだそう。

漱石先生、さすがです。

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ただ、残念ながら、このエピソードは実話ではないらしいのです。

文豪・漱石なら言いそうという真実味があり、まことしやかに広まっていますが、どうやって出来上がった逸話なのか、真相はよく分からないようです。

でも「月が綺麗ですね」って、とても素敵ですよね。考えた人はすごいです。
 
あなたと一緒だから、月がいつもよりずっと美しい。
本当に伝えたいのは、貴女が綺麗だということなんだ。
これからも貴女とこの月を見たいんだ。

「月が綺麗ですね」から色んな想いが感じられます。
「愛している」とストレートに伝えるよりも、奥ゆかしさや情感があって、とても日本人らしい愛の言葉ですね。

このエピソードを想像するとき、私の脳裏には秋の涼しい気配の中、ぽっかりと浮かぶ丸い月が思い浮かびます。

ただし、十五夜の満月ではなく、十三夜くらいの丸に満たない月です。

完璧な丸ではなく、これから完全になるという方が、二人の明るい未来を暗示しているように感じるからです。

十三夜って中途半端じゃない?とお思いの方。実は日本では旧暦8月の十五夜とともに、旧暦9月に十三夜の月を愛でて、お月見をする習慣があったのですよ。

三つの月見とは?

それでは月見のお話をしていきましょう。

月見といえばまずは「十五夜」。これは旧暦8月15日の月のことで、今の暦に直すと大体9月中旬~10月上旬に現れる満月です。(厳密には、満月から僅かにずれることもあります)
十五夜は「中秋の名月」とも呼ばれ、澄んだ夜に浮かぶ、一年で最も美しい月とされています。ちなみに、2021年は9月21日です。

十五夜の月を鑑賞して宴を催す文化は、中国から日本に入ってきたもので、平安貴族たちは観月の宴を開き、詩歌を詠んだそうです。

一方、「十三夜」は日本独自の月見文化で、旧暦9月13日に現れる満月手前の月を観て楽しみます。今の暦に置き換えると10月中旬~11月上旬に当たり、今年は10月18日です。

この月は、十五夜の満月よりも寒々と冴え渡るのが特徴で、十三夜を愛でる習慣は、十五夜の文化が日本に伝わった後、すでに平安時代には確立されていたようです。

十三夜は、十五夜に対して「後(のち)の月」と呼びます。十五夜だけに月見をして、十三夜には行わないことを「片月見」と言い、縁起が悪いとされました。

貴族は優雅に宴を楽しみましたが、庶民の間では収穫の感謝や祝いとしての意味合いも強いです。

十五夜に供えるものとして月見団子やススキが有名ですが、それ以外に、収穫された里芋をお供えすることから十五夜のことを「芋名月」、十三夜には豆や栗を供えることから「豆名月」や「栗名月」という言い方をしたりします。

また、十五夜、十三夜に比べると知名度が落ちますが、東日本では旧暦10月10日に月見をする十日夜(とおかんや)というのもあります。

十日夜は、稲刈りの終わりを意味する節目の行事で、その年の稲作を見守ってくださった田の神様が、山にお帰りになるのを送るのです。

三つの月見には、それぞれの時期に合った意味が込められているのですね。

月を眺めて自分を見つめるきっかけに

私は月を見るのが好きです。

自宅のベランダからぼんやり眺めることもありますが、特別に時間を作らずとも、夜道を見上げれば月はそこにあります。

私は大学生で上京して以来、最近までずっと東京に住んでいましたが、雑然とした都会の隙間からも月は見えます。

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月を眺めることは、自分を見つめることに繋がっていると思います。

イライラしたり、仕事に追われているときは、月を眺めて綺麗だと感じる心の余裕がありません。月になど見向きもせず、視線を下げて、せかせか帰宅して終了です。

でも月を見て、「今日の月は温かみがあるな」とか「月を覆う薄雲が月光に照らされて幻想的だな」とか、何かを感じ取れるときは心が落ち着いていて、感性が働いている状態です。

月を見て何故だか無性に泣けてきた。月を見て悲しみに浸る。

そんな過ごし方も、自分の感情の感じ方として素晴らしいと思います。それが得意だったのは平安貴族です。彼らは自然を見て、涙し、感情を感じることに長けていました。

一方、エラマプロジェクトでは、代表の石原侑美さんが、フィンランドなどの北欧で焚き火を眺める文化・習慣があることをお伝えしています。

侑美さんによると、焚き火を見ることでリラックスする効果や心を温かくする効果があるのだそうです。

月を眺めることと焚き火を眺めること、意図や効果に違いはあるかもしれませんが、心を豊かにするという意味では本質的に似ているような気がします。

ときには月を見ながら、ゆっくりと自分と対話するマイタイムの時間を取る。そんな風に過ごしてみるのはいかがでしょう?

もちろんどの月を眺めても良いですが、頻繁に眺めるのが無理だという方は、毎月、満月のタイミングを狙うと良いかもしれません。

実は、満月の日に占いの行事や祭りを行う風習が日本各地にありました。

その年の吉凶や農作物の出来などを占ったようですが、なぜ満月に行うかというと、月の満ち欠けを基準に暦を作っていた昔は、月が人間生活に与える影響が現代よりずっと強く、特に満月は、目安や境目として意識されやすかったからです。

日本古来の価値観にも合致しますので、境目である満月の夜に、月を眺めて自分の時間を取ることはおすすめです。

月の光は愛のメッセージ

この言葉に覚えのある方は、私と同年代かもしれませんね(笑)

アニメ『美少女戦士セーラームーン』の次回予告で使われていたフレーズです。
この記事を書きながら、ふと思い出して懐かしくなりました。

「月の光は愛のメッセージ」って、何気にとても奥深いですよね。

この言葉から様々なことを感じ取れそうですが、私は、月光がありのままの私を照らし、見守ってくれているように感じます。

あなたは月光から、どんなメッセージを受け取るでしょうか?

Text by 橘茉里(和えらま共同代表/和の文化を五感で楽しむ講座主宰/国語教師/香司)

■note「よむエラマ」で本記事を見てみる

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