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Elämäプロジェクト

【よむエラマ】フリーランス1年目が幸福度世界一のフィンランドで「社畜」をした旅。本当に幸せな働き方の体験記。

こんにちは。ひらふくです。

2024年もあと少しになりましたね。みなさんは今年どんな思い出ができたでしょうか?嬉しくなる記憶や思い出したくもない苦い記憶。いろいろあったかもしれません。

私の思い出の一つは10月に参加したエラマプロジェクトのツアーです。ツアータイトルは「”北欧のシリコンバレー” フィンランド・オウルで働き方とウェルビーイングを学ぶプログラム」。

これまで人事として社員の働き方に向き合ってきた私にとっては永遠のテーマです。また、今年からフリーランスになったこともあり、「幸せな働き方」は四六時中考えていることでした。

世界幸福度ランキングで1位をとり続けるフィンランド。そのワークスタイルはきっとヒントになると期待して、半年前からワクワクしていたのです。

ですが、まさかこのツアーで苦さも嬉しさも両方味わうことになるなんて思ってもいませんでした。

原因はフィンランド滞在中も私が日本での働き方をしていたこと。そうしたら一体何が起きたのでしょうか?フィンランドで七転八倒しながら得た「働き方」への気づきをご紹介します。

朝5時から夜23時まで働く

このツアーがおこなわれたのは10月13日〜19日までの7日間です。特に14日から18日までの5日間には、3人のフィンランド講師のかたからワークショップを受けることができました。

合間には自由時間もあって、オウルの街中を散策したりリサイクルショップに掘り出し物を探しに行ったり。イチョウが金色に染まる海沿いの公園で、落ち葉を踏みしめながら夕日を見たりもしました。

最終日には、河上の貸切ボートサウナで空気の冷たさとサウナの熱さに心身ともにリラックス。どこをとってもオリジナルなツアーだなとしみじみ思います。

さて、ここでツアーの楽しさだけをお伝えできればよかったのですが。その裏で起こっていたことをお話しさせてください。

私は現在フリーランスの人事としてフルリモートで働いています。いわゆるPCひとつでどこでも仕事ができる環境です。

こう聞くと自由そうですが、まだフリーとしての生活リズムを作れていない私は、ツアー中だけ休日にするなんて芸当ができませんでした。そのためツアー中も仕事を持ちこんで、日本の企業さんとの打ち合わせなどもしていました。

ですが日本とフィンランドの時差は6時間もあります。日本の朝11時がフィンランドの朝5時なのです。まして昼間はプログラムに参加しているので仕事ができません。結果、ツアーがはじまってみれば私の1日はこんなふうになりました。

4:30 起床

5:00 日本企業さんと打ち合わせ・そのままPC仕事

9:30 ツアープログラム開始

昼間 スマホで仕事の連絡を確認

16:30  ツアープログラム終了

18:00  PC仕事

23:00  就寝

なんて散々な生活リズム。他のツアー参加メンバーからは「社畜してるじゃん」と苦笑されました。

私はフィンランドで何をしているんだろう

一方で、フィンランドの人々は16時には仕事を終えて帰宅します。日本では「早く終わったらさらに他の仕事もするべきだ」という声も聞きますが、フィンランドでは帰宅して家庭や自分の時間にあてるのです。

仕事は人生の一部ではあるけれど全てではない。そう考えて人生全体を味わおうとしているスタンスに憧れます。

このスタンスは、ツアーで最初に講師をしてくださったニコさんも体現されていました。ニコさんは職業専門学校OSAOの元・校長先生です。

「生徒が人生に必要な力をつけられるよう手助けするのが先生です」。そう語りながら、フィンランドの人々にとっての幸せや人生観を紹介してくださいました。企業研修などを手がける人事としては、特に「学び」への考え方に感じ入りました(長くなるため今回は割愛しますがいつかご紹介したいです)。

ただ、ニコさんの語る「幸せ」に共感すればするほど、朝5時から夜23時まで仕事をしている”社畜”な自分が情けなくなりました。

半年前から楽しみにしていたのに、お金も時間もがんばって調整してここまで来たのに。現実の自分は「幸せな働き方」からかけ離れていることが浮き彫りになるばかりで。

ツアー中は相部屋だったので、ルームメイトを起こさないよう朝はホテルのロビーで仕事をしていました。7時ごろになると私の横をモーニングビュッフェを食べにいく人々が通りすぎていきます。

その豊かで和やかな雰囲気と、PCに向かっている自分の差を痛感して。私はフィンランドまで来て何をしているんだろうと思いました。

朝5時のロビーにはフロントの人と私しかいません。

あなたが元気で幸せだからこそ

転機が訪れたのはプログラム3日目。ライターのモニカ・ルーッコネンさんのワークショップでした。

モニカさんは日本でも翻訳出版されている『マイタイム』の著者です。日本に住んでおられた経験や、フィンランドの大企業ノキアでの会社員経験もあります。日本とフィンランドの働き方の違いやその背景まで話してくださいました。

モニカさんが提唱する”マイタイム”とは自分のための時間をとること。肩書を外して、自分を満たしてケアしてあげる時間を持つことです。エラマプロジェクトでもマイタイムの大切さは語られていて、その重要性はわかっているつもりでした。

でも、そんな私にモニカさんは言ったのです。

「日本人は周りに奉仕する優しい人たち。でも、まずは自分をケアしてあげましょう。

あなたが幸せだからこそ見ている人も幸せになれる」

いろいろな考えが頭をかけめぐりました。

私は自身をケアできているだろうか、日本人は自分より周りを優先しすぎていないだろうか…などです。

ただ、そのとき最後に心に浮かんだのは、朝のロビーでPCに向かう私を心配してくれていたツアーメンバーのことでした。

本当の”思いやり”って?

日本人の働き方のひとつに周りへの”思いやり”があると感じます。お客様や仲間など誰かのためにがんばったり、「自分は良くても他の人が困るから」と残業して手を尽くしてくれる人もいます。残業はよくないと眉をしかめながらも、私は思いやりを日本人の美徳だと思っていました。今も美徳だと思います。

でも、モニカさんの言葉でハッとしました。自分で精一杯な今の私は本当に相手を”思いやって”いるのだろうかと。

朝5時から仕事をしているときは、約7000km離れた日本の仕事相手のことを考えていました。私の都合で迷惑をかけたくないと”思いやって”、できるだけ相手のスケジュールに合わせていたのです。

そうやって眠たい目をこすりながらPCに向かう私に、ツアーメンバーは「大丈夫?」と声をかけてくれていました。「大丈夫!」と軽く返していましたが、今思えばその優しさの意味をちゃんと考えて受けとれていなかったのです。

このツアーは、他のメンバーにとっても日常を離れて味わったり楽しんだりする大切な時間です。なのに横で辛そうに仕事をする人がいたら気になりますよね。モニカさんの言葉でそこに思い至って申し訳なくなりました。そして、それを責めるのでなく気遣ってくれるメンバーの有難さにもようやく気づきました。

7000km先にいる人も大事です。でも、まず目の前にいる人を笑顔にできているのでしょうか。そして相手を笑顔にするのは自分が笑顔でいることなのではないでしょうか。

実は、ツアーに来る前は「自分をケアする」ことに少し後ろめたさもありました。周りより自分を優先していいのかな、それは利己的じゃないかなと思っていました。

でも、無理をしながら他人を”思いやる”姿は、実は身近な人たちを心配させているのかもしれません。それは誰も幸せではないのです。

モニカさんのワークショップを受けた日の夜から私は仕事をセーブしました。全ての仕事を拾うことはやめて、必要なものや続けたいものだけに。

できた時間で夜はみんなとバーに行って、真面目な話やお酒の感想や、翌日には忘れてしまうような笑い話をしました。外は気温5度と寒いのに、ワイワイしながらスーパーでアイスクリームを買って帰りました。

最終日の貸切サウナではみんな思い思いにすごしていました。川に飛びこむ人やサウナにこもる人、テーブルで話しこむ人、屋外のお風呂で空を見上げる人。その様子を見ながら、二度とないこのメンバーとの景色をずっと覚えていたいと思いました。

よく食べて、よく話して、よく笑いました。私が笑って相手も笑ってくれる時間でした。ツアーが終わった今も、ふと思い返してはあのとき仕事をセーブしてよかったと思います。

私が私を優先することで誰かに迷惑をかけたかもしれません。でも、自分が元気でいることで、また誰かを元気にもできるのではないでしょうか。

肌になじむ働き方をあなたと

今回のツアーでは、フィンランドの人々の働き方とウェルビーイングにふれました。知識だけではなく、現地の人々と直接接して感じたことや、ツアーメンバーと一緒だからこそ気づけたことがありました。

社畜をしないと気づけなかったのは情けないのですが、日本での働き方をフィンランドでやってみたからこそ理想と現実のギャップに気づけました。ギャップを埋めるために試行錯誤して実践することもできました。

国の制度や今までつちかってきた価値観が違うので、フィンランドのワークスタイルをそのまま日本に持ってくることはできません。ですが、やっぱりおたがい似ている部分もあって、フィンランドの人の「幸せ」は私の肌になじみます。

だから、私はこれからもフィンランドをヒントに、「幸せな働き方」をいろいろ実践してみようと思います。そのひとつとして、実は地元の島根県でフィンランドをテーマとしたコワーキングスペースをはじめることにしました。

先代のオーナーさんから継いで二代目としてやっていきます。名前は「コワーキングハウス・マヤッカ」。マヤッカとはフィンランド語で灯台のこと。人生の岐路で迷った時に立ち寄れる灯台のような場所になりたいです。

日本家屋と北欧テイストをミックスしたコワーキングスペースです。

幸せにいろいろな形があるように働き方もいろいろあっていいはず。日本のやり方、欧米のやり方、そしてフィンランドのやり方。人と違っていたとしても、自分がより心地よくいられる方法を探して実践してみてお伝えしていこうと思います。

そしてあなたが日々感じたこともたくさん聞かせてくれませんか。あなたのお話や元気で笑っている姿が私を笑顔にしてくれます。

人を思いやれるあなただからこそ、まずは自分からケアしてあげましょう。

あなたが今日も元気でいてくれることを願っています。

text by ひらふく(フィンランド的働きかた実践家)

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