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Elämäプロジェクト

【よむエラマ】「小学校 〜それは小さな社会〜」は、日本の教育の“再発見”。私たちが受け継ぐべきものとは?

こんにちは、ライターのpieniです。

現在全国で上映されている映画「小学校 〜それは小さな社会〜」を見られた方はいらっしゃいますか?

私は「関西日本・フィンランド協会」さんのFacebookで、教育大国フィンランドでも大ヒットした映画として紹介されていたのをきっかけにこの映画を知りました。

現在小学1年生の娘の母として奮闘中のわたくし。

とくに今年は4月から10月までの期間、小学校の教室で母子登校(母子で授業に参加する)というちょっぴり貴重な体験をきっかけに、小学校の取り組みや先生、教育にとても興味を持つようになりました。

それもあり、この作品を見に行きました。

この映画を通して、感じたことや考えたことがたくさんあったので、わたしなりのレビューをお届けしたいと思います。

映画「小学校 〜それは小さな社会 〜 」公式サイト
https://shogakko-film.com/

「小学校〜それは小さな社会〜」から生まれた短編版「Instruments of a Beating Heart」で映画の一部を見ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=DRW0auOiqm4

6年生になると「日本人」?

映画「小学校 〜それは小さな 社会 〜 」は東京都世田谷区の塚戸小学校の1年間に密着し、新1年生の入学から6年生の卒業、そして次年度のスタートまでの学校生活を追った教育ドキュメンタリー映画です。

監督はイギリス人の父と日本人の母を持つ山崎エマさん。

「6歳児は世界のどこでも同じようだけれど、12歳になる頃には、日本の子どもは“日本人”になっている。すなわちそれは、小学校が鍵になっているのではないか」との思いを強めた彼女は、日本社会の未来を考える上でも、公立小学校を舞台に映画を撮りたいと思った。
映画「小学校 〜それは小さな 社会 〜 」公式サイトより

このようなきっかけから、エマ監督は4,000時間にもなる膨大な時間を現場で過ごし、小学校の児童や先生、学校生活そのものを映し出しています。

映画では特に大きな事件が起こるわけでもなければ、特殊な教育プログラムが出てくるわけでもなく、日常の学校生活が年間行事に沿いながら淡々と映し出されます。

しかし児童や先生が、何かアクションを起こしたとき「そのとき何を考えたか」については、本人の話し声やインタビューシーンによって伝わってきます。

また、1年生と6年生に焦点があてられ、小学校生活6年間で子どもたちはどのように変化するのか、どのように「日本人」になるのか、そこに注目して1年生と6年生の対比を描かれているようにも感じました。

映画を見ている最中も、見終わった後もさまざまな感情が沸いてきました。

私の場合は子育て中なので、気が付けばどうしても「母親の気持ち」で見ていました。

1年生の児童が授業中寂しくなったり、できないことを乗り越えなければいけないシーンがあり、つい娘と重ねてしまい涙する。

6年生の先生が卒業する子どもたちに話しかけるシーンがあり、感動で涙。

また、先生自身も己のポリシーを貫くことと、保護者からの声、児童の反応の中で迷いながら1年間の学級運営をされる姿にまた涙...。

このようにさまざまなシーンで、ハンカチとティッシュが必要な作品でした。

そんな状態になりつつも、この映画から小学校について強く感じたことがありました。

大人になった今、あなたは小学校の世界を知っていますか?

小学校。日本では義務教育ということもあり、大人になるまでに多くの人が一度は体験する世界。

しかし、卒業後は学校の先生にならない限り、詳しくその世界を知ることはないのではないでしょうか。

保護者になったとしても、参観日や先生との懇談、運動会や音楽会などのイベント、子どもからの話で知る程度。

PTA役員や、ボランティアなどで関わることがあるかもしれませんが、それでも学校の日常を知ることは難しいと思います。

わたし自身、この後に書く小学校との関わりがなければ、知ることができない世界だったと思います。

この映画は、舞台となった塚戸小学校のすべてが映し出されているわけではないと思いますが、普段は深く知ることができない小学校の「今」を広く世に知らせてくれたと感じています。

映画のポスターやWEBサイトには「いま、小学校を知ることは未来の日本を考えること」というキャッチコピーが掲げてあります。

まずは、小学校の世界を知るということ。そして一人ひとりが考えること。

これこそがこの映画の重要なポイントだと感じています。

映画を企画された監督はもちろん、世界に学校の様子を公開すると決意された塚戸小学校の先生や保護者の方々の勇気に賞賛を送りたいと感じました。

「小学生」そして「日本人」になるということ

ここから、私の体験談も織り交ぜて感想を書きます。

うちの娘は入学時に「学校に行くのが怖い、ひとりでは行けない」という状態でした。

なので学校に慣れるまで母子登校という道を選びました。

母子登校について聞いたり、調べてみると、お母さんは別室や車の中で待機して過ごす、子どもと一緒に図書室など教室とは別室で過ごすなど、いろんなパターンがありました。

うちの場合は子どもの不安が強かったため、しばらく授業も一緒に受けさせてもらえるようお願いしました。

教室の一番後ろに座り、1年生の授業を一緒に受ける日々。

今思うと、毎日が参観日。

小学校を卒業して以来、実に29年ぶりに小学校へ通い、リアルな学校の世界を知ることができました。

保育園児だった子どもたちが入学を機に、集団生活で必要なことを身につけたり、授業として初めて字を習ったり、計算を習う。

時には怒られたり、問題の答えが分からず悔し涙を流しながらも、できるようになる様子や、学校の中で1日1日と段階を踏んで「小学生」になる姿を目の当たりにしました。

たとえば、集団で移動するときは列からはみ出さない、自分の場所をしっかり守る。そうでなければ、学校で迷子になったり、階段から落ちたり危険なこともある。

授業の始まりと終わりにはしっかり挨拶をする。遊ぶときは遊ぶ、時間を守ってけじめをつける。

一見窮屈そうで、特にうちの娘はそういった集団行動が苦手な面はあるのですが、この一番初期の教育を受け、小学生になっていく過程が社会に出たときの基礎的な力になっていると感じたのです。

ひとつ面白いと思った事例があります。

おそらく日本人の多くの人が経験したことがあるであろう「プリント回し」。

プリントを1枚もらったら、自分の分をとって後ろの人に回していくというあれです。

私は気が付いたころには何も考えずに回していましたが、これも1年生の時にやり方を教わっているのだと発見しました。

1年生になってしばらくの間は先生が1枚1枚プリントを配っておられましたが、1か月ほどたち、児童たちが学校生活に慣れ始めたころに練習が始まりました。

「プリントをもったら、自分の分を1枚とりましょう。残りのプリントは後ろを振り向いて、どうぞと声をかけて渡しましょう。もらった人はありがとうと言いましょう。そしてまた後ろの人へプリントを回します」

このように詳しくレクチャーしてから、プリント回しの実践スタート。

はじめはバサッとプリントを全部落とす子もいるし、自分のをとり忘れてしまう子もいる、途中で止まっていることもありました。

しかし、数週間もするとみんなスムーズにプリントを渡せるようになっていき、それが日常となりました。

社会に出てからは、なかなかプリントを回す機会は減りましたが、それでも何らかの集まりに出たときはスムーズに資料を回しています。

気にも留めていなかった行為ですが、このプリント回しのように、社会で生きていく基礎を小学校で教わってきたのだと思います。

映画でも、給食の配膳や掃除、挨拶をする、シューズをそろえる、廊下の進行方向に気を付けて歩くといった基本的なことを教えてもらい取り組むシーンが出てきます。

このような日常生活の基礎を教えることが日本が変わらず取り組んできた、日本の教育だと感じました。

また、作中で6年生が最上級生としての心構えを新学期に言い渡されるシーンがあります。「自分の殻を破れ!」と起業塾などで言われるような言葉をかけられる6年生。

運動会の練習中、なかなか課題をクリアできない子どもたちに向けて再びその言葉が出てきます。「結果ではなく、過程が大事なんだ。目標に向かって殻を破れ!」。

正直、今どきの小学生はそこまで求められるのか!と驚きました。

作中には、最上級生としての姿を見せたり、運動会に向けてできなかったことを自宅でも何回も練習するシーンがあり、先生の言葉を実践している姿が見えました。

娘が通う小学校でも、6年生ってこんなに賢かったっけ?私の時代はもっと適当だった気がする...と思うような姿を見ることがあります。

娘が教室に入れず廊下にいると、すれ違う6年生が面白いことを言って笑わせてくれたり、手を振ってくれたり。母としてもその6年生に何度心を救われたことか。

運動会など全校の活動ではリーダーとして引っ張っていく様子もよくわかりました。

賛否はさまざまあれど、日本人らしい頑張りや集団行動、秩序を守るということは、確かに小学校で基礎がつくられているのかもしれません。

先ほども書きましたが、小学校での生活や教育の様子は、授業参観だけではわかりません。この映画を通して、日本の小学校の世界を知る機会が広がったことは、日本人を知ることや、自分たちがどうやって学んできたのかを振り返るきっかけになると感じています。

見た後に小学校について考えたくなる

この映画の一番の醍醐味は、小学校という多くの人が通る世界を題材にしていることから、映画を見た後に「感情が動く、感想をシェアしたくなる」ことではないでしょうか。

教育関係、暮らし関係のWEBコラムや、個人のブログやnoteなどでも、考察記事やレビュー記事が多いように感じます。

私も、映画を見た友人たちと感想シェア会を行いました。

そこで出た感想を一部ご紹介します。

●1年生も6年生も考えていることが思った以上に大人で驚いた
●子どの頑張りはもちろん、先生たちも悩みながらも一生懸命接してくれてるんだと涙が出た
●責任というキーワードがよく出てきたが、それは子どもにとっては重いと感じた
●自立はしてほしいけれど、責任に押しつぶされてほしくない
●6年生の男の子が「大人になりたくない。だって大変そうだから」というシーンがあった。それは残念だけれど、大人が大人になりたい姿を見せれていないから
先生にもっと心の余裕を持たせてあげたい
●朝早く来て、授業もして、学校活動も担い、事務的な仕事もする。それではゆっくり考える時間もない
●先生ひとりで40人ほどを見るのはかなり負担。ピザ2枚でお腹がいっぱいになれる人数でなければ、チームが大きすぎるという理論(アマゾンのCEO、ジェフ・ベゾスの「ピザ2枚の法則」)を参考にすると、とてもではないけれど運営は難しいと思う
●先生の役割についていろいろ考えることができる。例えば、大学のように授業はその専門の先生にお願いして、担任の先生はファシリテーターや、児童一人一人の様子を見て気づいたことを手助けするなど、全体を見ることに特化してはどうか
●先生が何をしたくて、何を専門にしたくて先生になったかを聞いてみたい
●先生それぞれが、何のプロだと思っているかで学校運営や、役割が変わってきそう

などなど、子どもに関しての感想から、先生へ対しての想いなどさまざまな声が聞けました。

ひとりで映画を見ただけでは気づかなかった「学校の在り方、学校の運営、先生の在り方」などを考える機会になりました。

この映画を見た方が、ほかにはどのような感想を持たれているかとても興味深いです。

また、この映画に関してぜひ読んでいただきたい記事があります。

なぜ「教育大国」フィンランドが、日本の公立小学校に注目するか? ー日本とフィンランドそれぞれのリアルを専門家が語り合うー【オフィシャルレポート】

山崎エマ監督と、フィンランドの教育専門家、日本の教育の専門家、映画に出てくる塚戸小学校の先生とでディスカッションされた時のレポートです。

この記事の中では、フィンランドの教育との比較や、フィンランドの教育専門家が感じた日本の教育のポイントについて書かれています。

また、映画を撮影したエマ監督や教育関係者の願いとして「この映画を通して日本の教育をもう一度考えるきっかけにしたい」といった話が語られています。

この記事の中のエマ監督の話から引用します。

ある小学校のお母さんが、この映画を見た後に泣きながら、「先生たちがこんなにも悩みながら、一生懸命議論しているなんて考えたことがありませんでした」と話してくれました。そして、「自分もこれまで学校に対してあまりプラスになるような行動をしてこなかった。不安が先に立ち、提案もできていなかったけれど、明日から何か行動を起こします」と言ってくれたのです。こうした気づきを持つ人が1人でも増えれば、学校や教員、教育に関わる全ての人たちを、みんなでリフトアップできるのではないかと思っています。

私も、母子登校で小学校を知ったり、この映画を見たことにより、学校に対して何ができるのだろう?と考えるようになりました。

まだ具体的にアクションを起こせてはいませんが、関わりをもつ機会を増やしたり、学校のオープンデーに参加したり、娘が通う学校の取り組みを文章を通じて世に伝えることをしたいです。

日本の学校や教育に関して、ほかの国と比較し自由や選択が少ないという厳しい意見もあります。

またわたし自身も学校にはいいイメージをもっていなかった時期もあります。

もちろん、時代が変わるにつれ学校や教育も変化が必要だとは思いますが、頭ごなしにダメだなどと思うのではなく、映画を見たお母さんがエマ監督に話されたように「学校にプラスになること」それを考え続けたいと強く感じました。

映画「小学校 〜それは小さな社会 〜 」はまだ全国上映中です。(2025年3月現在)

イオンシネマなど大きな映画館での上映も始まっているようですので、小学校の世界を知りたい方はぜひご覧ください!

そして感想を語り合ってもらったり、コメントでいただけると嬉しいです。

エラマの学校もにもぜひ来てみてください

「小学校 〜それは小さな社会 〜 」は日本の教育の話でしたが、このよむエラマを運営するElämäプロジェクトでは、フィンランドの教育や文化から自分の暮らし方を考える・描く「エラマの学校」を開講しています!

全国どこでも、世界のどこでもコースや講座を開講。オンラインでも学べるので、教育に興味がある方はぜひ覗いてみてください。

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