Elämäプロジェクト

【よむエラマ】手放された器が、誰かの食卓を再生する。フィンランドと「Re:Table」で見つけた豊かさ

こんにちは。Kangasこと、ライフデザインコーチの和田直子です。
6月28日、私が仲間と運営する愛知県あま市の「ゴミを出さないレストラン」nico.chanで、「Re : Table」というイベントを開催しました。

かつて不用品として手放された食器たちを倉庫から掘り出し、nico.chanのシェフが料理を盛り付け、フルコースの食事を楽しむというイベントです。
使われる食器の一部は、お客様ご自身に選んでいただく体験もしていただきました。

「Re : Table」の詳細はこちら(定期的に開催しています)

「ゴミを出さないレストラン」nico.chan Re:table~手放された器から始まる、食卓の再生~ https://plantthewhy0830.peatix.com/

このイベントのアイディアは、私たち運営メンバーが家庭から出る不用品の回収拠点となっている倉庫を訪れ、仕分けしきれないほどに積み上げられたモノ(食器、台所用品、衣類、布団などあらゆる生活用品)を目にしたことがきっかけとなり生まれました。

イベントの内容に賛同してくださった倉庫側のご協力を得て、私たちは積み上げられた器たちの中からピンとくるものを掘り出してレストランへ持ち帰りました。

初めて開催した「Re : Table」では、初対面のお客様どうしが「次のお料理はどんなお皿で出てくるのか楽しみね」などと会話される姿も見られ、また私自身も「前は、どんな方が使っていたのだろう」と自然と想像していました。

そして、お一人のお客様は、ご自分でお料理の一品に選ばれていたお皿を購入されて、ご自宅に迎え入れる選択をされました。後日、SNSにその器に盛り付けられたお料理の写真が投稿されていて、「手放された器の価値をもう一度引き出し循環させる」という私たちのイベントへの想いが実った瞬間を目にすることができました。

その写真がこちら。ご本人に掲載のご快諾を頂きました!

私がフィンランドで体験した「循環」

そんな光景を目にしながら思い出した、私自身のフィンランドでの体験があります。

2023年のエラマプロジェクトのフィンランドツアーに参加した時のことです。
サイマー湖水地方のプンカハリュという小さな街のセカンドハンドショップへ入りました。フィンランドのセカンドハンドショップを、この時初めて知った私は、あることにとても感動したことを覚えています。

それは、使い古されたような食器が、売り場の真ん中にたくさん並んでいたことです。そんなこと?と思われるかもしれません。でも、考えてみてください。日本の「リサイクルショップ」と呼ばれるようなお店では、食器に関しては未使用のもの、しかも箱入りのものなど明らかに未使用とわかるものしか取り扱っていない場合が多くありませんか?

しかしフィンランドでは、その後の旅で入ったどのセカンドハンドショップでも、まるで少し前までは、どこかのお宅のキッチンや食卓に並んでいたかのような食器が売られているのです。逆に未使用のものを見かけたことなど、一度もないかもしれません。

初めて訪れたプンカハリュのセカンドハンドショップで目にした食器たちは「次はどんなお家に行けるのかしら?」と、あるものはワクワクしながら、あるものはどーんと落ち着いて、お迎えを待っているかのように見えました。


そんな中で私の心が惹かれたのは、こちらのカップ&ソーサーです。

フィンランドの代表的な陶器ブランドであるアラビアのもので、美しいブルーのラインとアンティークな雰囲気に惹かれ、旅の思い出として2脚購入することを決めました。
それをレジに持っていくと、店主さんは割れないように頑丈に包みながらこんなことを教えてくれました。

「これは、1970年代のとっても良いものよ」

その言葉を聞いた私は、一瞬でいろんなことを想像しました。
「前の持ち主さんはどんな人だったんだろう?」
「どんな雰囲気のお家で使われてたのだろう?」

「少し年老いたきれいなご婦人と旦那様が、このカップでコーヒーを飲みながらお喋りしたり、読書なんかされていたかも…」
などなど。

私は自分の想像力がどんどん膨らむのを感じながら、大事に大事に受け取ったことを覚えています。

また、同じ街にあるレストランに入ったことも思い出しました。

地産地消の食材でお料理を提供し、地元の人々に愛されているというそのレストランでは、私たちが訪れたときにも地域の皆さんの集まりで使われていて、とても賑わっていました。

そのレストランのお料理もワインもとっても美味しくて、メインのフィンランド名物のムイックのお味は今でも忘れられません(ムイックは湖などに生息する淡水魚で、バターや油でカリッと揚げたお料理が最高!)。

その感動と同じくらい私を感動させたことが、使われている食器すべてが、セカンドハンドのものだったということ!!

これは私の想像なのですが、「もしこれらすべての食器がこの地域の家庭で使われていたものだったとしたら、なんて素敵な循環なのだろう!」「もしそうだとしたら、このレストランは地元の皆さんの誇りだろうなあ!」なんて思いを巡らしていました。

私が初めてフィンランドを旅したときの思い出の一部には、出会った器とそれを手にしていたであろう人々に思いを馳せる時間がありました。

時を経て、今年の6月に開催したRe : Tableでは、フィンランドで感じた美しく豊かな循環を、今私が暮らす身近な場所で作り出し、あの時の感動を再び味わうことができました。


循環が生み出す豊かさの正体

こうして振り返ってみると、私がRe:Tableやフィンランドで感じていた豊かさを生み出したのは私自身の「想像力」だったのかもしれません。


モノが循環していくと、そこには物語が生まれます。人がその循環の中に入ったり、触れたりすることで、その物語を想像する力が生まれる。そして、その想像力が、豊かな感情を生み出すのだと思います。


使い込まれた質感 や、たとえ傷や欠けがあったとしても、本来なら劣化とされてしまうものが、その器の物語を想像するだけで唯一無二の味わいに変わる。それは私たち人間の生き様と重なるものがあるからこそ、物語を持つ器やモノに感情が湧いてくるのでしょうね。

そして面白いのは、この想像力は器だけに向かっているのではなく、器の向こう側にいる人へ向かっていることです。
会ったこともない、そしてこれからも出会うことはないであろう誰かを想像している時の感覚は、私にとっては、人の人生をテーマにした上質な映画や舞台を観たあとの感動や余韻とどこか似ているのです。

また、一つの器の「循環」の一部になるということは、いつか自分自身もまた誰かが想像する物語の登場人物になるということかもしれません。

そして、このような見知らぬ誰かから受け継いだものだけでなく、もっと身近なところでは、例えば、祖父母や親の代から受け継いだ着物、時計やアクセサリー、時には食器や家具などを通して、家族の物語を次の世代にまで紡いでいく「循環」もあります。

そう考えると、「循環」とは、単にモノが移動していくことを指すのではなく、想像力を通して、人と人、過去と未来がつながっていくことなのだと思います。

実は、私にも手放すことのできない大切なお皿があります。
それは、幼い頃の私、そして私の幼かった子供たちも使っていた、ファミリア(老舗のベビー・子ども服や用品のブランド)の平皿です。母が大事にしまっておいてくれたそのお皿を、私もなんとなく使っていた記憶がおぼろげに残っています。
昔住んでいた家の食卓で、そのお皿で出してもらったパンを食べながら、台所に立つ母を見ていた記憶。何でもないけれど、思い出すと幸せな記憶です。
そして、いつかまたそのお皿を使ってくれる小さな家族を想像しながら、私も大切にしまっているのです。

「循環」が生み出す想像力やその中に宿る記憶は、物語を紡ぎ、私に豊かな感情をもたらしてくれることに気付かされました。

「つながっている」という感覚がわたしたちを豊かにする

だからといって、容易に手に入る新品がいけないという訳ではありません。それを必要とする場面は、もちろんあります。

でも、その手軽さの中でも、モノの向こうにある人の手や時間、そして今、自分が循環のスタートラインに立っていることを、少しだけでも想像してみてはどうでしょう?

モノを迎え入れようとしている時、手放そうとしている時。あなたはどんな感情を抱いていたいですか?そのモノと、どんな物語を紡ぎたいですか?

そうやって少し立ち止まってみることで、自分にとって心地よく、納得のいく選び方や手放し方が見えてきます。「購入する」「処分する」という意識から、「循環させる」という意識へ。そのささやかな変化が、循環の中にいる人々と時間を超えてつながっている感覚を連れてきてくれるのです。

Re : Table で、お客様が選んだ器を大切に持ち帰る姿を見送りながら、そしてフィンランドで、店主さんに包んでもらったカップを受け取りながら、私はきっと同じものを感じていた気がします。

一つの器から、その向こうにいる誰かを想像する。過去にその器を使っていた人と、これからその器を使うかもしれない人と、想像力を通してゆるやかにつながる。そうしたつながりの一つひとつが積み重なって、モノは循環していくのだと思います。

あなたが次に何かを手に取るとき、あるいは何かを手放すとき。その先に、どんな人や時間があったのか、少しだけ想像してみませんか。

その小さな想像力や時を超えた誰かとのつながりの感覚が、暮らしを、そしてあなた自身の物語を、きっと少し豊かにしてくれるはずです。

そして、いつかあなたが手放したモノもまた、誰かの想像力によって、新しい物語とともに受け継がれていくのかもしれません。 

Text by Kangas(和田直子)(しなやかで強く優しい社会を織りなすライフコーチ)

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