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Elämäプロジェクト

【よむエラマ】私にとっての幸せな生き方は「余命1週間だとしたら」を考えると見えてくる

こんにちは。エラマプロジェクトの和文化担当、橘茉里です。

私がエラマプロジェクトに運営メンバーとして加入したのは2020年。

また、自身の主催ワークショップを立ち上げるなど、本格的にパラレルワーカーとして活動を始めたのも2020年のことです。

それ以来、少しずつ経験値を積み上げながら、パラレルワーカー歴は今年で5年目を迎えました。

5年目になると、1年目の頃とはだいぶ心境が変わっていることに気づきます。

和文化の奥深さ、豊かさを広めたい。

敷居が高く思われがちな和文化に親しむための第一歩をつくりたい。

その想いは今も昔も同じですが、1年目は「活躍したい」「自分の力がどの程度通用するか挑戦したい」といった、自己実現の欲求が今よりも強かったように思います。

私の本業は教員ですが、教員は休日出勤もありますし、仕事を持ち帰って夜間に作業することもあります。そのため、休日や夜間に働くことへの抵抗は元々ありませんでした。

ですから、パラレルワークのために自分の余暇を仕事に充てることは苦にならず、むしろたくさん働けることにやりがいを感じていました。

けれど、プライベートな時間を削って仕事を頑張るという状態をある程度経験してみた結果、どうやら私はその状態に満足してしまったようなのです。

私は、仕事ガツガツモードから、新たな生き方へとシフトしていきたいと考えているのです。

では、今の私が望む生き方とは何なのでしょう?

今回は、私にとっての幸せとは何なのかを改めて考えてみたいと思います。

あと1週間で命が尽きるとしたら?

私にとっての幸せとは何だろう。

どうやったらそれが分かるのだろう。

簡単に分かる方法があったらいいのに。

そんなことをつらつらと考えているうちに、閃きました。

“あと1週間で命が尽きるとしたら、私は何がしたいだろう?”

こう自分に問いかけてみれば良いのだと。

あと1週間でこの世を去るとなれば、世間体やお金を気にすることなく、自分が本当に望むことだけを選ぶはずです。

つまりこの問いを考えることによって、自分が本当に求めているものは何か、自分にとっての幸せとは何か、ということが分かるに違いありません。

そこで、自分の命を残り1週間と仮定して、想像を膨らませてみることにしました。

やりたいことは何でもやってみよう!

さあ、何をしよう!?

……想像してみて、愕然としました。

なんと、やりたいことがなかったのです!

「やりたいことは、……特にないなぁ」

豪遊してみる?

1週間を老舗旅館の離れで過ごす?

楽しそうではありますが、人生最後の1週間を使ってまでしたいことではありません。

「行きたい場所も特にないなぁ」

世界の絶景や世界遺産など、行ってみたいと思っていた場所はいくつかありますが、やはり残り1週間の命を使ってまで行きたいとは思えないのです。

「食べたいものは、……うーん」

美味しいものは大好きなので、採れたての鮮魚の舟盛りとか、高級食材とか、確かに食べたい気はします。

でも、なぜかそういう豪勢なものよりも、丁寧に炊いたお米に、お味噌汁とお漬物。

そんなシンプルなご飯を大切に味わえたら十分だと感じました。

驚くべきことに、あと1週間で命が尽きると仮定した結果、特別なことは何もしなくていいという答えが出てきたのです。

残り1週間の人生の中で、本当に私がしたいことは何?

この問いを深掘りしていくにつれ、自分の中の欲のようなものがどんどん削り取られて、身軽になっていくような感覚がありました。

そして、心の中から自然に出てきた答えは「自分の家で、愛する猫たちと心穏やかに過ごしたい」というものでした。

まだ見ぬ世界の絶景を眺めに行くよりも、美食を味わうことよりも、私は猫たちと静かに暮らしたい。

それが私にとっての幸せ。

この結論に、私は思わず笑ってしまいました。

だって、私の望みはすでに叶っているのです。

猫たちのおかげで、私は穏やかで満ち足りた日々を送っています。

そっか、私はもうすでに豊かで幸せなんだ。

そうつぶやくと、心がぽかぽかと温かくなりました。

「足るを知る」ことで豊かで幸せな生き方になる

「足るを知る」もしくは「知足」という考え方があります。これは古代中国の思想家、老子が記したとされる『老子』に出てくる言葉です。

辞書を引くと、“自分の今の状態に満足し、欲張らないこと” といった感じの説明が出てきますが、その説明だとちょっと言葉足らずな印象があります。

実は、「足るを知る」の後ろには言葉が続きます。『老子』には「足るを知る者は富む」と表現されているのです。

つまり『老子』には、“今の自分のありのままを受け入れ、満足することによって、精神的な豊かさを得ることができるよ” ということが書かれているのです。

確かに、どんなに物質的に恵まれていたとしても、本人が「足りない」「満たされない」という意識でいる限り、いつまで経っても安心感や満足感は訪れず、心の平穏や豊かさは得られないですよね。

お金持ちだったり、才能に溢れていたりと、世間から羨まれる条件を持った人なのに、なぜか幸せそうに見えないということがあったり、その反対に、稼ぎは少なく生活は厳しそうなのに、いつもニコニコと幸せいっぱいに過ごしている人がいたりします。

これも「足るを知る」を実践できているか否かの違いなのかなと感じます。

そして私が、あと1週間で命が尽きるならと仮定して、あれこれ考えを巡らせたプロセスも、「私にとっての足るを知る」ための作業だったように思います。

そのプロセスをちょっと振り返ってみましょう。

1週間の間にやりたいことを思い浮かべてみたけれど、どれもしっくりこなくて、自分の家で猫たちと穏やかに暮らすことこそ、私が求めているものだという結論に至った。

しかし、それはすでに叶っているものだった。

私は、自分にとっての豊かで幸せな生き方がもうすでに実現できていることに気づいた。

これってまさに「私にとっての足るを知る」だと思いませんか?

もちろん私だって今の生活に全く不満がないわけじゃないし、もっとこうしたい、こうなりたいという欲求は当然あります。

でも、自分にとっての「足るを知る」が分かっていると、焦ったりあがいたり、他人を羨んだりすることなく、心が落ち着いた状態で日々を過ごせるように思います。

「足るを知る」ことで得られる豊かさや幸せは、大規模でドラマチックなものではないでしょう。

ほんの些細な出来事に対して、「ああ、これが幸せってことなんだなぁ」としみじみ感じるような、そんな慎ましやかで穏やかな幸福のことだと思います。

そして、そんな幸福をあなたもすでに手に入れているのです。

あとは「足るを知る」ことに気づくだけです。

仕事は、長い人生を歩むために必要なもの

あと1週間で命が尽きるとしたら、という問いかけから、自分にとっての「足るを知る」を知った私ですが、実は、今まで意図的に触れていないことがありました。

それは仕事のことです。

もし自分の命が残り1週間だったならば、私は何の未練もなく、すべての仕事を手放すでしょう。

あと1週間しかないのに、仕事をしているなんて時間がもったいない!

私は猫たちとまったりごろごろするんだ!

きっとこう思うはずです。

しかし現実のリアルな私にとっては、仕事はなくてはならないものですし、残り1週間の命という縛りがなければ、仕事は「重要なものランキング」のトップ3に入るくらい大切なものです。

生きている私にとって仕事は必要。

でも、残り1週間の命なら仕事はいらない。

では、私にとって仕事とは一体どんな存在なのでしょう?

仕事をしたいという気持ちは、10年後も数十年後も、自分はこの世界に生きていると思うからこそ、成り立つものではないでしょうか。

自分の時間がまだ数十年あるということは、その数十年を有意義に過ごすための行動をしなければなりません。

まずは、お金が必要です。

それだけでなく、生きがいも必要です。

仕事というのは、お金と生きがいの両方を満たしてくれるものなのではないでしょうか。

私たちはこの人間社会を面白く楽しく生きていくために、生きがいを必要としているのかもしれません。

生きがいとは、長い人生を豊かにするために必要なもの。

そして、生きがい、やりがいの最たるものと言えば、仕事ではないでしょうか。

だから私は、余命1週間だったら仕事はいらないけれど、余命数十年だったら必要と感じるのだと思います。

「足るを知る」生き方と、仕事から生きがいを得る生き方は、ベクトルが違う生き方ですね。

では、私たちはどのように生きていったら良いのでしょう?

私は両立させれば良いのだと思います。

「足るを知る」生き方と、やりがいや生きがいを感じる生き方、その両方のバランスを取りながら生きていくのが、現代人に合っているのではないかと感じます。

この記事の冒頭で、パラレルワーカー5年目の私は、1年目の頃とは心境が変わってきていると書きました。

思えば、1年目の私はやりがいや生きがい重視の生き方をしていたように思います。

けれど今の私は、あの頃よりも「足るを知る」を大切にしたくなっているのです。

私も自分なりのバランスを探りながら、これからの人生を歩んでいきたいと思います。

暖かな日差しの中、猫たちの寝顔を眺めながら、そんなことを考えた今日この頃なのでした。

Text by 橘茉里(和えらま共同代表/和の文化を五感で楽しむ講座主宰/国語教師/香司)

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