Elämäプロジェクト

【エラマ思考】フィンランドと日本の年末年始。なぜ日本人は清め、フィンランド人は静けさを選ぶのか?


年末が近づくと、暮らしは少しずつ慌ただしさを帯びていきます。
その一方で、どこか静けさが深まっていくような気配を感じることもあります。

日本では大掃除やお正月の準備が始まり、フィンランドでは、街を照らす灯りがともり始めます。

今回は、日本とフィンランドの年末年始を比べながら、それぞれの文化が大切にしている価値観や暮らしの知恵を見つめていきましょう。

日本の年末:清めて手放し、お正月を迎える

私たちが「年末」と聞いて思い浮かべる大掃除や年越しそば、除夜の鐘。
これらの行事の根底には、「お正月に年神様をお迎えする準備」という考え方があります。

■ 12月13日頃:正月事始め
正月事始めは、12月13日に行われる、正月の準備を正式に始める日のことです。

正月の行事は、年神(歳神)さまを迎えるための一連の儀式と考えられ、この日は「年神(歳神)さまを迎える支度の始まり」の日なのです。

この日には、門松に使う松を山に採りに行く「松迎え」や、正月料理づくりの準備として、囲炉裏やかまどを清める「煤払い(すすはらい)」が行われました。

■ 大晦日:清めの一日
神社では、年に二度の大祓(6月・12月)が行われます。
宮中行事として古くから伝わる「追儺(ついな)」という鬼払いの行事も、もとは大晦日に行われていたもので、その後、節分行事へと変化していきました。

■ 年越しそばと除夜の鐘
大晦日に年越しそばを食べるのは、そばは切れやすいため、「悪縁を断つ」「区切りをつける」という願いが込められているからです。

そして夜には108回の寺の鐘の音とともに、煩悩をひとつずつ手放していく。大晦日は、一年を清めて整える「締めくくりの日」でした。

フィンランドの年末:クリスマスと独立記念日

日本の12月と言えば、年越しにまつわる行事が重要視されていますが、フィンランドでは、11月初旬から続くクリスマス(Joulu)が重要な行事となっています。

■ 11月からの楽しみ「Pikkujoulu(ピックヨウル)」

フィンランド語で「小さなクリスマス」を意味するピックヨウル。これは日本でいう「忘年会」のようなものです。

11月頃から、職場や友人たちと集まって食事やパーティーを楽しみます。静かに過ごす本番のクリスマスとは対照的に、賑やかに一年の労をねぎらう大切な文化です。

■  12月6日:独立記念日

ロシアからの独立を祝う大切な祝日です。この日には、大統領官邸での晩餐会が生中継され、多くの国民がテレビの前で見守ります。

また、夕方6時から8時の間、家の窓辺に「2本のキャンドル(フィンランド国旗の青と白)」を灯す伝統があります。これは戦没者への追悼と、平和への祈りが込められた静かで厳かな習慣です。

■ Joulu(ヨウル)=冬至祭が原型

フィンランド語でクリスマスを意味する「Joulu」は、キリスト教以前の冬至祭が由来の言葉。「冬至を無事に越え、春の訪れを祈る」という意味合いがあります。

そして、クリスマスイブの正午には「クリスマスの平和宣言」が行われ、そこから国中が静寂に包まれます。

欠かせないのが「クリスマスサウナ(Joulusauna)」です。

日本の大晦日の入浴のように、サウナに入って心身の垢を落とし、清らかな体でクリスマスのお祝いのご馳走をいただくのが習わしです。サウナには妖精(トントゥ)が住んでいるとされ、静かに入るのがマナーとされています。

日本の年始:年神様を迎える時間




日本のお正月は、「年神さまを家にお迎えする」という考え方が根底にあります。

■ 門松

松は神様が降りてくる「依り代」の役割があります。正月飾りの門松は神様への目印であり、さらに宿る場所でもあるのです。

■ 鏡餅

円形の餅は「鏡」に見立てられ、神様が宿る象徴とされてきました。
神社のご神鏡のイメージともつながるお供え物です。

■ 松の内と七草粥

松の内は、年神さまが家に滞在する期間のことです。関東では1月7日頃まで、他地域では15日までとされることもあります。

最終日には七草粥を食べ、飾りを納め、日常へと戻っていきます。

■ 初詣が広まったのは明治期

現在のように有名神社へ出かけていく初詣は、明治期の鉄道会社のPRで広まった比較的新しい習慣です。

それ以前は、その年の吉方にある身近な社寺へ参る「恵方参り」がより一般的でした。

フィンランドの年始:意外とあっさり?

フィンランドでは、年末に比べると年始はとても静かです。

■ 錫(すず)占いで未来を知る

大晦日の夜の楽しみといえば、「Uudenvuodentina(ウーデンヴォデンティナ)」と呼ばれる錫(すず)占いです。

蹄鉄の形をした錫を小さな柄杓に入れて火で溶かし、バケツの水に一気に落として固めます。

固まった錫の形や、その影が何に見えるかで、新年の運勢を占うのです(例:船の形なら旅行に行ける、表面がボコボコしていたらお金持ちになる、など)。

日本の「おみくじ」のような感覚で、大人も子供も盛り上がります。

■ カウントダウンと日常への回帰

年越しの瞬間には、自治体が主催する花火が夜空を彩り、シャンパンで乾杯をして新年を祝います。

1月1日は祝日ですが、2日からはすぐに仕事や学校が始まります。

ただ、クリスマスの飾り付けは「公現祭(Loppiainen)」のある1月6日頃までそのままにされ、街にはまだ冬の魔法が残っています。

「年末の主役はクリスマス。年始はすっと日常へ」

その切り替えの早さも、フィンランドらしい合理性かもしれません。

年末年始を味わう「食」の文化

節目の時間には、食卓にも文化が宿ります。

■ 日本の食文化

日本では大晦日に食べる「年越しそば」や正月の「おせち」などが年末年始の代表的な料理ですね。

「年越しそば」は、もともと地域によっては「晦日(みそか)そば」と呼ばれ、月末に食べられていたようです。切れやすいそばは「厄落とし」の象徴と考えられ、こういった節目に食べるようになりました。

また「おせち料理」について、「節(せち)」とは五節句などの“季節の特別な日”のことで、その日に神様へ供える料理のことを「御節供(おせちく)」と言います。つまり、「おせち」のことですね。

正月料理として現在の形が定着しました。北海道や東北では、大晦日から食べる地域もあります。

■ フィンランドの食文化

クリスマスの朝に食べる定番といえば、お米を牛乳で甘く煮込んだミルク粥「Riisipuuro(リーシプーロ)」です。

シナモンと砂糖をかけて食べるのが一般的ですが、このお鍋の中に一粒だけ「皮をむいたアーモンド」を隠し入れます。

取り分けられた自分のお皿にアーモンドが入っていた人は、次の年にとても幸運が訪れる(あるいは結婚できる!)と言われています。

日本の七草粥や鏡開きのように、食卓で幸福を願う温かい習慣です。

和フィン折衷の年末年始アイデア

エラマプロジェクトから皆さまに、豊かで幸せな暮らしを送るヒントとなるような、和フィン折衷の年末年始の過ごし方アイディアをご紹介します。

1. 暮らしに「ちょこっと和」を取り入れる

年末年始は和のものを暮らしに取り入れやすい時期です。

例えば、和柄の小物を使ったり、タンスにしまい込んでいる和食器を出してみたり。忙しくておせちを作る余裕がない方も、一品だけは作ってみたり。

無理なくできる小さな一歩で、季節の感覚がぐっと豊かになります。

2. テレビを消して、音のない夜を味わう

大晦日の夜、家の中の音を消してみると、外からは様々な音が聞こえてきます。

遠くの鐘の音、街の気配、静けさという音。耳を澄ませると、節目の空気が立ち上ってきます。

3. フィンランド流・穏やかな時間をつくる

キャンドルを灯し、温かい飲み物を片手に、いつもよりゆっくり過ごす夜をつくってみましょう。

日本の「清め」とフィンランドの「静けさ」は、どちらも心を整える力を持っています。

おわりに

文化は違うのに、節目を迎えるときの感覚には共通するものがある。日本とフィンランドの年末年始を並べてみると、そんなことに気づきます。

暮らしを整えること。
自然のリズムに寄り添うこと。
家族と温かな時間を分かち合うこと。

静かな気づきをくれる季節を、今年はどんなふうに味わいたいでしょうか。
日本とフィンランド、それぞれの良さが、あなたの年末年始を少し豊かにしてくれますように。

編集後記

近年、大晦日は自宅にて一人で迎えることが多いです。

家じゅうの音を消して、いつもより早く布団に入って、そして静けさの中でゆっくりと自己との対話を行います。そして、猫たちの寝息に耳を澄ませながら、今年も無事に過ごせたことへの感謝を嚙みしめます。

その時間は私にとって、とても豊かな過ごし方です。賑やかな年越しもいいけれど、こんな過ごし方もおすすめですよ。

ぜひあなたらしい年越しスタイルを見つけてみてくださいね。

(執筆:橘茉里)

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