2024年10月13日(日)~19日(土)、エラマプロジェクトでは「北欧のシリコンバレー」フィンランド・オウルにて、「フィンランド・オウルで働き方とウェルビーイングを学ぶプログラム」を実施しました。本レポートでは、参加者である平田萌さん(人事のプロ、キャリアコンサルタント)の体験に基づいた、フィンランドの働き方とウェルビーイングに関する考察をお届けします。
ツアー概要
日時: 2024年10月13日(日)~10月19日(土)
場所: フィンランド・オウル(現地集合・現地解散)
特徴: 職業専門学校または大学の視察、現地のライフスタイル専門家との懇談、森林プログラム体験、ボートサウナ体験
人事のプロが見たフィンランド:参加前の期待と現実
平田さんは、2024年春からフリーランスの人事として独立したばかり。 フィンランドの「幸せな働き方」を学び、自身の独立後の人生に活かしたいという強い思いで本ツアーに参加しました。 参加前は、フィンランドの高い1人あたりのGDPと短い労働時間から、日本のビジネスパーソンにはない高度な「仕事術」や「チームワーク」の存在を期待していました。しかし、ツアーを通して得た結論は「予想外の気づき」でした。
ツアーを通しての3つの気づき
ツアーを通して平田さんが得た3つの大きな気づきは、
1. 「かっこいい人」の定義の違い
フィンランドの職業専門学校で講演を行った元校長・ニコさんとの出会いを通して、平田さんは「かっこいい人」の定義が日本とフィンランドで大きく異なることを学びました。日本では仕事を頑張る人がかっこいいと見られ、「長く働き業務量をこなす」「生産性が高い」「成果を出す」ことが会社で評価される傾向がありますが、ニコさんは「人生に余裕のある人」こそが魅力的だと語ったのです。この考え方は、平田さんにとって衝撃的なものでした。
2. 自然と共にある休憩時間
ニコさんの講義中には、自然の中で休憩を取る時間がありました。参加者たちは、森を散歩し、気に入った葉っぱを持ち帰るなど、仕事とは全く異なることに意識を集中させました。この経験を通して、平田さんは「自然の中で過ごすだけでなく、意識して仕事を忘れることで切り替えてリフレッシュできる」ことを実感。そして、日本でも短い休憩時間(5~10分)をこまめにとることで、仕事への集中力や生産性を高められる可能性に気づきました。
3. まずは「自分」をケアする
ツアー最終日のモニカさん(フィンランド在住の日本人ライター)とのワークショップで、「日本人は周りに優しく、自分自身を後回しにする傾向がある」という指摘を受けました。モニカさんは「まずは自分をケアすること。自分が元気だからこそ、新しいことへの意欲が湧いてきたり周りの人に寛容になれる」と語りました。平田さんは、この言葉が、日本の働き方改革や人間関係の改善、そして自身の幸せな生き方につながるヒントだと感じました。
ツアー後の変化と今後の展望
ツアー後、平田さんは、フィンランド流の働き方を日本にそのまま導入することは難しいと考えながらも、いくつかの実践可能な方法を考案しました。
そして、この経験と気づきを基に、島根県でフィンランドをテーマにしたコワーキングスペース「majakka(マヤッカ)」(フィンランド語で「灯台」の意)を始めることことを決意。(正式には前任者から引き継いで、2024年冬から新体制としてスタート)迷える人たちの「灯台」となるような場所を目指し、活動していくとのことです。
編集後記
平田さんのレポートは、フィンランドの「幸せな働き方」を具体的なエピソードとともに紹介するだけでなく、日本社会における働き方や生き方への深い洞察を示唆するものでした。 ツアー参加者の方々からも温かいコメントが寄せられ、本プログラムの意義が改めて確認できました。 来年の5月には第2弾ツアーの開催も決定しています。 より多くの皆様に、フィンランドの「幸せ」を体感していただきたいと考えています。
2024年11月10日、Gozar新宿御苑にて、フィンランド生涯教育研究家 石原侑美による「フィンランド調査研究滞在報告会」を開催いたしました。
本報告会は、石原が2024年8月から10月にかけて行ったフィンランドでの2ヶ月間の調査研究滞在、そして現地ツアー実施の成果を皆さまと共有する貴重な機会となりました。物価上昇や大統領選、移民問題など、社会変化の渦中にあるフィンランドの“今”を、研究者視点と現地で活動する実践者視点の両面から紐解き、フィンランド社会の柔軟な対応力や人々のマインドセットに迫りました。
当日は、午前と午後の二部構成で開催。
【午前:北欧フィンランド・ウェルビーイング現地調査&ツアー報告会(10:30〜12:00)】
フィンランドのウェルビーイングな社会の取り組みと暮らしに焦点を当て、9月に実施された現地ツアーの報告を中心に行われました。小中一貫校やスマートシティ、ゼロウェイストレストラン、オーガニックハーブ農園といった訪問先での体験談に加え、一般家庭訪問や森散策の様子も紹介され、フィンランドのリアルな暮らしが鮮やかに伝えられました。
【午後:北欧フィンランドの教育とライフスタイルの講座〜なぜフィンランドは幸福度が世界一位なのか〜(13:30〜15:00)】
7年間のフィンランド教育研究の集大成ともいえる本講座では、石原さんの豊富な知見に基づいたフィンランド教育の真髄が語られました。2024年に視察した学校(小中一貫校、高等学校、職業専門学校)の様子や、フィンランドの職業教育とウェルビーイングの関係性、働き方やライフワークバランスのマネジメント方法など、多岐にわたる内容が展開されました。
【両部共通】
フィンランドの基礎知識:地理、歴史、国民性などを初心者にも分かりやすく解説。
ワーク:参加者同士が対話を通して学びを深め、気づきを共有するワークを実施。
質疑応答:石原への質問を通して理解を深める時間を設けました。
【会場の様子】
フィンランドのコーヒー、お茶、お菓子、そして飛騨高山や参加者の方々からの温かい差し入れが並ぶ和やかな雰囲気の中、石原がフィンランドで買い付けた北欧雑貨の販売コーナーも盛況でした。また、関連書籍の展示コーナーも設けられ、参加者の皆さまは思い思いにフィンランドの世界観に浸っていました。
イベント終了後も、参加者同士の活発な交流が2時間近く続き、フィンランドへの関心の高さと共に、エラマプロジェクトのコミュニティの温かさを感じさせるひとときとなりました。
ご多忙の中ご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました! エラマプロジェクトは、今後も皆さまにフィンランドの魅力をお届けするイベントを開催してまいります。どうぞご期待ください。
【次回イベント予告】